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ボイタ法を受けて

 その名前だけは知っていた「ボイタ法」を、この歳になって、しかも頸椎症がこんなに進んでしまってから受けることになるとは思ってもみなかった。
 仲立ちとなったのは安倍美知子さん。家から5分とかからないところに住んでいる脳性マヒの女性だ。大腿骨の摩耗が原因で股関節のはげしい痛みに悩まされていたのが、劇的に回復したという。のみならず、ひどく側湾していた身体がたちまち真っ直ぐになり、それとともに体調もいっきに好転したらしい。彼女が初めてボイタ法と出会ったのは46歳。いまから四年前のことだ。
 わたしは現在57歳になる。それでも大阪にある府立大手前整枝学園に行ってみようと思ったのは、脳性マヒに起こりがちな頸椎の変形による神経障害が極度にまで達し、頸椎の手術にもっとも積極的な医者にまで「手遅れだ」と言われてしまったからだ。頸椎にかかる無理と、それを助長する筋緊張との悪循環をなんとか断ちきりたいという想いもあった。
 とはいっても、安倍さんとわたしとの身体の状態はまったく違う。しかもわたしには、養護学校の教師時代に刷り込まれた「脳性マヒ児に有効とされる療法がいくつかあるが、それは子供のうちだけだ」という観念があった。

 介助体勢をめぐる諸問題をとりあえず乗り越えて大阪に行った。そして介助者の中から、四週間通しでその方法を身につけてくれると名乗り出てくれたひとも、確保できていた。
幼きに効果ありとふボイタ法五十路のわれにいかに働く

(2004年10月9日)
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