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身体の緊張と睡眠に関して

 わたしは、かなり早くから「夜型人間」だったようです。
 すでに小学校時代から、寝付きが悪いと両親からいわれていました。そしてこれは、明らかに脳性マヒによる心身の緊張と関係していたと思います。そうした状態に波があって、小学校3年生にあたる1年間と、同じく5年生にあたる1年間の二度は、最悪でした。身体中の緊張で、夜も眠れない日が続いたのです。
 眠れないことにプレッシャーがかかるだけでなく、眠れない間はずっと身体の緊張が続くわけですから、胸のあたりの筋肉の緊張で呼吸そのものが苦しくてますます寝付けず、「こんな自分の身体から抜け出せたら」と、よく思ったものです。
 それ以後は、そんなに年単位でのはっきりした波はなくなりましたが、その傾向はずっと続いていたのです。
 大学生になってから、わたしは酒を覚えました。そして、それによって睡眠をコントロールするすべを見つけました。わたしにとって、それは大きな“すくい”だったことは確かです。
 教職時代は、もちろん朝8時15分までには職員室の自分の席に座っていなければならなかったので、そのとおりにするしかありませんでした。それでも、夏休みなどにはいつの間にか「夜型」の生活になっていたのを覚えています。酒を飲みながらの方が心身ともにリラックスするためか文章も書きやすく、翌日しらふで読み返しても、恥ずかしいどころかかえってうまく書けているな、と思うことが多かったので、ますますその癖がつきました。
 やがて歩けなくなり、ついに寝たきりになってからも、わたしはそうした生活を続けてきました。
 なにかを一生懸命やっていれば、それだけで余計なことは考えずにすむし、酔いがまわってきたり、疲れたりすれば、そのまま眠ればいいだけなのですから。
 少なくとも、去年の秋頃まではこうしたパターンで一応は問題がありませんでした。夜間の介助者に負担をかけることが、少なからず精神的なプレッシャーとして働いていたことは事実ですが…。

 昨年暮れから今年の春まで、わたしは例の介護制度の改悪、すなわち「支援費制度」に対する対応で、非常な無理を自分に強いてしまいました。パソコンを介して大量の情報を受け取り、くだんの「公開質問状」をはじめ、手紙や呼びかけ文など、かなり大量の文章を同じ方法の延長で書いてしまったのですから。
 その結果、健康上無視できない事態をまねいているな、と感じたのはとりあえずそれを一段落させた、その後でした。

 まず第一は、首の回りの筋肉の緊張のことです。
 そして第二には、胃や十二指腸に、かなりの負担をかけてしまったことです。しかも約五ヶ月の間…。
 なにもせずにただ寝ているだけで、頭がそっくりかえるような緊張が、首の回りの筋肉に働くのです。そしてそういう状態にいったん陥ると、直接足にしびれが走るようになりました。変形した頸椎が、脊髄の神経の束をさらに圧迫している証拠です。そして、そのたびに強くなったり範囲が広くなったりしたしびれは、もう、もとには戻りません。
また、それまでは酒だけを飲んでいても、そのままで気持ちよく眠れたのに、いよいよそうはいかなくなった、ということです。
 医師には、何度も相談しました。睡眠剤も、使ってみました。
 眠るときが、一番問題です。パソコンを通してやっと成り立っているわたしの外部とのコミュニケーションは、深夜にしか落ち着いてはできません。睡眠剤は、結局うまくは使えませんでした。
 睡眠剤を飲んでも、なかなか眠れない。眠れないと、頭がそっくりかえるような筋肉の力がいつまでも働いて、頸椎にかかる物理的なストレスから、解放されることがない。
 結局、今のところは酒によって気持ちよく心身をリラックスさせ、同時に最低限やりたいことをやる…。そこにしか落ち着いていません。
 でも、下手な酒の飲み方をすると、確実に胃や十二指腸に負担をかけてしまう。その結果、気持ち悪くなることも多くなってしまいました。
 いま、そのジレンマに直面しているところです。
 寝たきりの重度障害者でありながら、ある意味で頑固にここまで自分の生活を引っ張ってきてしまった、その報い、ともいえば言えるかも知れません。でも、それだけに、安易な一般論では片付かないということを、ぜひとも理解してほしい。

 わたしはいま、たとえいつ死のうとも、生きている限りは少しも譲れないところがあるので、それを貫くしかないと覚悟を決めてはいるのですが、だからといって決して死にたくはない!
 ひとりで頑張るのではなく、安心して周りの人々と本当に持続的な「満足して生かしあう関係」が少しずつでも作れればこの問題は一挙に解決できる、とは思うのですが…。