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 小田急線の複々線工事により、駅の拡張・改築が行われました。今年の6月に下北沢駅の調査をしたこともあり、既に複々線工事が終了し、新しくなった駅がどのような造りになっているのか調べてみることにしました。。
 また今回は、東京都が定めた福祉の街づくり条例に則した施設整備マニュアルを部分的に参照しながら、計測したデータを検証してみました。
 なお、ここでは「整備基準」と「誘導基準」の二種類の基準値を用をいています。
「整備基準」は、高齢者、障害者などを含む全ての人々が、駅舎などを安全かつ円滑に利用できる最低限の基準として定めたものです。
「誘導基準」は、高齢者、障害者が公共交通施設をより快適に利用できる望ましい基準として定めたものです。
 これらの二つの基準値のうち、実際の数値が近かったほうを( )に表示しました。


【喜多見駅】

 新しくなった喜多見駅は、平成9年4月28日から利用が開始された。
線路の複々線化により、駅のコンコースも以前に比べて広くなった。
高架式線路なので、コンコースが1階、ホームは2階に分かれている。
【喜多見駅 改札】

 自動改札機は全部で6台。整備マニュアルには、「改札口通路のうち1つ以上は有効幅90cm以上でなければならない」という基準が示されている。
【車椅子用改札(有人改札)】

 車椅子利用者は有人改札口を使用する。入口・出口両方の目的に利用できる。


 車椅子用改札口の幅=89 cm(整備基準値=90cm以上)
切符の投入口の高さ=84 cm
【券売機】

 この型のものは新型。金銭投入口が低めに造られている。しかし、金額が表示される面に角度がついていることで、車椅子利用者や子供などが低い位置から見る場合は、ボタンの表示が見にくい可能性もある。
 誘導基準には、「車椅子が接近しやすいようカウンター下部にスペースを設ける」という項目もあるが、ここではカウンター下部のスペースがもう少しあったほうが良い。
また、カウンターまでの高さが75cmのため、遠藤さんはあまり近くに寄れなかった。写真のように斜めに近づくとどうだろう?

投入口までの高さ=99 cm(誘導基準値=100〜130cm)
カウンターまでの高さ=75 cm
カウンターの奥行=21 cm
【清算機】

 清算機まで目の不自由な人を誘導する、点字ブロックがないことに気づいた。
 実際に清算機を視覚障害の方が利用するのは不便だと思われる。視覚障害の人は改札口で清算することになる。
【男性用トイレのサイン】

 このサインからも分かるように、ここでは車椅子利用者も健常者と同じトイレを利用できる造りになっている。
【男性用トイレ】

 男性用の個室。中には手すりが設置されている。
【洗面台】

 洗面台にも手すりがついている。
【共用トイレのサイン】

 サインには、「どなたでもご利用頂けます」と書かれている。
大人と小さい子供、乳幼児の利用が可能。
【共用トイレの中】

 全体的にスペースを広くとってある。
便器には、小さい子供用のカバーもついていた。
左手側の手すりは開閉式になっている。

奥行=227 cm
幅=277 cm
【洗面台とベビーシート】

 洗面台の横には、ベビーシートが設置されている。
【手すりと手洗い】

 トイレの横に、手すりと小さな手洗い場が設置されている。
手すりがこのようにL字型についていると、立ち上がるときに便利だろう。
【簡易腰掛とインターホン】

 トイレの入口の外にある、簡易型の腰掛。
【電話台】

 電話台の高さは79 cmだったので、車椅子の肘掛にぶつからずに利用できる高さだった。
公衆電話に関する整備基準は次の通り。

(1)台の高さは70cm程度とすること。
(2)台の下部には、高さ65cm以上、奥行き45cm程度のスペースを設けること。
【喜多見駅1階】

ホームへ上がるには、階段とエスカレーターとエレベーターの3つの手段がある。
【エレベーター1階】

 車椅子が2台乗る広さではないが、私達が調査をしていた時に同乗した一般の方が2、3人あった。この大きさのエレベータの定員は11人。

入口の幅=89cm(整備基準値=80cm以上)
全体の幅=141cm(整備基準値=140cm以上)
全体の奥行=145cm(整備基準値=135cm以上)
ボタンの位置=102cm(整備基準値=90〜100cm)
【エレベーター2階】

 エレベータの数は一台のみ。ただし、ここではホームの端ではなく、ホームの中央付近にあるので、わざわざホームの端まで移動する必要がない。
【エスカレーター】

 エスカレータの全体の幅は1m。上りと下りの2方向。
「上り方向に5m以上の高低差がある駅には、上下専用のエスカレーターを設置する」という誘導基準がある。
【水のみ台】

 水のみ台の下をなくし、車椅子でも足を台の下に入れて飲むことができるように工夫されている。
水のみ台に関する整備基準は次の通り。

「高さ70cm〜80cmとし、下部に車椅子のフットレストが入るスペースを確保する。」

台までの高さ=86cm
【水のみ台】

 手前の蛇口は、簡単な操作でだれでも水が飲めるようにデザインされている。
【喜多見駅ホーム】

 喜多見駅のホームは、屋根部分が曲線でやわらかいイメージだ。窓も大きく、街並が見渡せるようにできている。ベンチにも木が使用されていて、やさしい雰囲気をかもしだしている。
【ホームと電車の間隔】

 電車の乗降時にできる、電車とホームの隙間および段差。これらが車椅子での乗降に支障がないように解消されるといいのだが。その結果小さな子供、足の不自由な方、目の不自由な方、スーツケースを持った方など、すべての人にとって、電車の乗降が安全になる。
【ホームと電車の間】

 車椅子で乗りこむ場合には、まず前輪を持ち上げ、少し中へ進んでから後輪を持ち上げる。 誘導基準でも、「乗降場と電車とのすき間及び段差は、可能な限り小さくすること」となっていて、数字は示されていません。
【階段】

 階段の構造は3駅とも、まったく同じだった。
調べたデータは、誘導基準とほぼ一致していた。


全体の幅=310cm(誘導基準値=150cm以上)
一段の高さ=16cm(誘導基準値=16cm以下)
一段の奥行=34.5cm(誘導基準値=30cm以上)
踊場の奥行=151cm(誘導基準値=150cm以上)
手すりの高さ=74cm・95cm
段数=下から、7・13・13・13段
【狛江駅1階】

 狛江駅コンコース。
【休憩所】

 この休憩所は他の二駅にもあった。
【トイレ横の腰掛】

 喜多見駅では簡易式の腰掛だったが、狛江駅では木のベンチだった。
【スロープ】

 スロープの角度や幅を測っていたら、子供達が興味深く覗き込んでいた。
狛江駅は外の道路と駅のコンコースの間に階段2段分の高低差がある。

スロープの勾配=4.5度
スロープの幅=155cm
手すりの高さ=59cm 80cm
【駅の外周】

 喜多見駅南口の様子。
【券売機】

 カウンターの高さなど、喜多見駅とすべて同じ。健常者が切符を購入するには、目の高さより低い位置にボタンがあるので、金額を知るのに特に大きな支障はない。
【狛江駅ホーム】

 屋根の形や窓の大きさなどが、喜多見駅とは異なる。狛江駅のデザインは直線的。駅のデザインには、住民の意見が反映されているそうだ。
非常用インターホン

 緊急の時は、乗客から乗務員にインターホンで連絡をとることができる。車両と車掌室との間で通話ができるインターホンは、最新の車両から導入されている。
【和泉多摩川駅】

 コンコースは3駅ともよく似ている。
【スロープ】

 下り方面に向かって地形が下がっているために、道路と駅の間に段差が生じる。
スロープはに折返しがあり、やや長め。
勾配は5度で、やや急に感じられた。

手すりの高さ=65,86cm
スロープの幅=155cm
勾配=5度
【スロープ】

 このスロープをストレッチャーで通る場合は、折返し点でうまく廻ることができるだろうか?

【道路との段差】

 写真でも分かるように、和泉多摩川の駅は階段5段分、道路より高くなっている。
【自転車の問題】

 狛江駅のスロープ。自転車の駐輪の仕方にはかねてから問題があり、改装当初はスロープの上まで自転車が入りこんでいた。
 スロープから外は駅の敷地でないために、実際小田急電鉄では手が出せない。近くに駐輪所もあるそうだが、駅により近い場所に置きたいという住民の心理はなかなか変えることができない。しかし、全ての人にとって利用しやすい環境を作るには、駅の改装のみではなく、利用者のマナーや思いやりが欠かせない。
【和泉多摩川駅ホーム】

 駅のすぐ向こう側に多摩川が流れている。川を渡ると神奈川県に入る。


 <まとめ>

 今回の調査は小田急電鉄の方に同行していただき、貴重な情報を得ることができました。
小田急電鉄では、それぞれの駅の利用者の意見を多くとりいれる努力をしていることが分かりました。その結果、素材に金属だけでなく木を使ったり、ベンチを多く置いたり、休憩所を設けたりと、全体の雰囲気が明るくなりました。
 また、駅の改装が都の施設整備基準に基づいて行われていることも分かりました。
トイレや有人改札口やエレベーターやスロープなど、以前はなかったものが新たに設置されていました。特にエレベーターやスロープは足の不自由な方、車椅子利用者、その他大勢の人にとって有益です。
トイレについても、車椅子利用者のみでなく、子供からお年寄りまでを意識した構造になっている点が印象深かったです。
全体的に、全ての人に愛される駅を目指した、という印象を与えられました。