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調査(980718)

 今回の調査は遠藤さんが以前勤めていた、都立光明養護学校で行いました。ここは、小学部から高等部までが同じ敷地内に建っていて、それぞれが渡り廊下でつながっています。その他、中庭、体育館、スクールバスのターミナル、そしてその屋上にはプールもあります。
 この日の調査では、プールまでは調べられませんでしたが、その他は回ることができました。

 光明養護学校正門。この門を入って左側に玄関がある。
 玄関。外の段差と、中の段差は、このように解消されている。奥に写っているのは事務室の窓口。
 事務室の右側にある廊下を入ると、すぐ隣が校長室。少し手前を右に折れると、廊下がカーペット敷きになり、小学部の教室が低学年から順に並んでいる。
 小学部の教室があるA棟一階の廊下。幅は 2.8m、手すりの高さは 70cm。
 二階をふくめて、この棟の小・中学部の教室の前にあたるところには、このように緑色のカーペットが敷かれていた。左側に教室が並び、右に上肢訓練室やトイレなどがある。ドアは全てスライド式。
 この棟(A棟)だけは、つきあたってからその奥斜め左方向にも同じような廊下や小学部の教室が続いている。いわば逆“く”の字型とでもいうべきか。一階と二階とを結ぶ、スロープもある。
 ちなみに、この写真のつきあたりまでの部分にあたる二階には、中学部の教室がある。
 廊下のカーペットの端を留めている、留め金。
 小学部の男子トイレのひとつ。入口の幅は 1.6m。中はかなり広かった。
 個室に分かれてはいず、天井にカーテンレールがついていて、必要に応じてカーテンで隠すようになっている。そのため車椅子などがドアや壁にぶつかってしまう心配はない。
 部屋の正面奥には簡易ベッドが置かれている。
 トイレ左手には洗面台とシャワーがあった。万が一体が汚れてしまっても、すぐにきれいに洗える。
 上にも書いたように、天井にカーテンレールがついているのがお分かりでしょうか。小学部だから、ということもあるのでしょうが、これなら、仕切りに制約されずに便器に直行できる。スペースの狭さを気にすることもない。
 ちょっとしたことだが、一般のトイレではこういう形式のものはない。せめて車椅子用の公衆トイレには、どんな場合にも対応できるような十分な広さを与えて欲しい。
 小学部の教室。ここは障害の重い子たちのグループ学習室である。机や椅子はなく、中央にカーペットが敷かれている。障害が重い場合は椅子に座って勉強するより、車椅子からも解放して床で自由に動き回れる方が適していることも多いとのこと。
 この校舎を造った当時は、今ほど重度で、しかも重複障害をもっている子は、そんなに多くはなかったそうだ。椅子と机で、または車椅子に乗ったまま特殊机で勉強していたが、障害の重い子供が増えるにつれ、このように多様な形で学習する形態に変わってきた。内装工事と外装工事で、数年前に校舎を改善してある。
 教室後ろの水道。高さが違うものがふたつ。低いほうは水槽の高さが 24cm。高いほうは床から 70cmのところにある。
 逆“く”の字形をしたA棟の、ちょうど折れ目にあたる部分にある階段。
 狭い部分は幅 65cm。広い部分は 160cm。両手でてすりにつかまって昇り降りするためにあるのだろう。階段の材質は滑らないようにゴムでできていた。
 一段の高さは 16cm。奥行きが 33cm。手すりの高さは 82cmと、廊下より少し高めだった。
 階段の上に備え付けられていた転落防止柵。
 小学部高学年(A棟二階奥)の教室のひとつ。ここにはカーペットは敷かれていない。床の材質は木。黒板ではなくホワイトボードがついている。
 教室の窓。床からの高さは 87cm。障害の重い生徒が圧倒的に多くなり、床の上のカーペット上で活動することが多い今となっては、少し高すぎる。
 向こう側に見える建物は、スクールバスのターミナルを裏側から見たところ。上にプールがある。
 A棟奥右側にある、一階と二階をつなぐスロープ。これだけのスロープは一般の学校にはないだろう。
 幅は 2.46m。手すりの高さ 75cm。傾斜は4度強。床の材質はゴム。
 写真では分かりにくいが、正面の踊り場の壁の下部、茶色に写っている部分は、衝撃防止のためのクッションになっている。
 スロープを下から見たところ。天井が2階まで吹きぬけになっているのと、光がよく差し込むため西洋の教会のようだった。
 A棟2階奥の廊下の突き当たりにある音楽室。上には5線の黒板。下はホワイトボード。床に座って授業を受けるので、目の高さに合わせてこうしたのだろう。
 同じ部屋の、黒板右側にある非常用出口。「すべり台」とあるのは、外に避難用のすべり台があるからである。
 中学部の教室。ここは3年生のある学級の教室だが、授業の時には学年全体のうちで、比較的軽い障害を持った生徒の教科学習に使われている。
 写真にはないが、小学部と同じように、カーペットをしきつめたグループ学習室もある。教室後ろの流しの造りは、小学部と同じ。
 ここにも「すべり台」の表示。
 左右が中学部の教室になっているA棟二階の廊下の端で、下はちょうど校長室のあたりである。2つ上の写真とは、逆“く”の字型をした長いA棟の反対側にあたる。
 外からすべり台を写したもの。でもよく見ると、コンクリートでできているので非常時に本当に「滑り」降りることができるか疑わしい。
 二階にある、各棟をつなぐ廊下。A棟からB、C棟をまっすぐに貫いている。
 日当たりのとても良い廊下だった。床は木でできている。幅は 2.5m。手すりの高さは 76cm。
 途中、B棟にあたるところの右側には、中・高部の職員室がある。
 ここは正門側から見て奥の方にある、二階渡り廊下。C棟内部からB棟の方を見たところである。半ばは吹きさらしの形だが、外気には触れられる。扉は手動なのでちょっと不便だ。
 しかしこうした渡り廊下の途中にも、扉のガラス越しに見えるように、後から増築されたトイレの出入口が接している。障害の重い生徒が急速に増えるにつれ、以前からあるトイレの改造だけでなく、こうしたトイレを次々と増設する必要が生じてきた。
 上記の、渡り廊下に接しているトイレ。このように便器が木製の床に埋め込まれているものもあった。
 上と同じトイレの中のようす。床は 30cmほど高くなっている。
 同じ渡り廊下の左側にある、避難用のすべり台。中庭に下りられるようになっているが、ここのは金属製。
 この種の避難用すべり台は数えた限りで4つほどあったが、これについては改めて詳しく調査・検討することにしたい。
 そのままB棟に入り、右側にある補装具室。理学療法の本や車椅子、その他の器具が置かれていた。
 上肢訓練室。補装具室とも、また次の機能訓練室とも通路で直接つながっているが、ここもやはり高等部の教室があるB棟の一部である。
 機能訓練室。ここでは専門の理学療法士や学年の担当教師全員による訓練が行われる。
 B棟とA棟とを結ぶ二階渡り廊下に接して建てられている。
 高等部のあるB棟の中央にあるスロープ。二階側から撮ってみた。
 勾配は4度強。踊り場の正面にある壁には、やはり衝撃防止用のクッションが取り付けられている。
 同じスロープを一階から見たところ。
 写真には写っていないが、一階部分にも、このスロープの延長上の壁に、衝撃防止用のクッションがやはり取り付けられている。
 高等部3年生の教室。
 学級と授業との関係について。1学年は約25名前後。これが2学級に編成されている。朝のHRや給食、それに特設のHRの時間などは、それぞれの学級の教室で行なう。が、授業のほとんどは、学級の枠を取り払い、障害の程度に応じていくつかのグループに分けて行なっている。一番障害の程度の軽い生徒達のグループは教科ごとにその教科の先生が入って、その次に軽い生徒達のグループは全教科にあたる内容の授業を2、3人の先生で、さらに重い障害をもった生徒達のグループは基礎的な訓練を中心にマンツーマンで、という具合に。学級の教室を、授業では初めの二つのグループにあてることが多いので、残ったグループが使う教室が必要である。「グループ学習室」と便宜的に書いたのは、こうしたグループが使っている教室のことである。
 スロープを下りたところにある、男子トイレ。入るとその奥が三つの部分に分かれている。写真は、その内の一番左の部分。その右は、少し高くなっていて、埋め込み式のトイレになっている。さらに右には、バスタブとちょっとした洗い場があった。立小便用便器は、ちょうどこのカメラの後ろ側に3つ並んでいた。
 女子トイレは、二階のちょうど同じ場所にある。
 高等部のグループ学習室。ただしこれはC棟一階にある。他の教室よりだいぶ広いが、後ろの流しなどの造りは他の教室と同じだった。ちょうどこの教室と、隣の教室を合わせた上あたりが、小学部の職員室か。
 C棟には、もとは被服室、印刷技術室、木工室等といった、主として高等部の職業科で使うような特別教室が多かった。C棟に限らず、全校的にこうした特別教室は、今ではその多くが障害の重い生徒達のためのグループ学習室に変わっている。C棟に一階と二階とを結ぶスロープがないのがちょっと気にかかった。
 中庭の様子。右が小学部と中学部の教室があるA棟。左は高等部の教室があるB棟。正面に小さく見えているのが正門で、その右が玄関や事務室にあたる。二階の部分はA棟からB、C棟を真っ直ぐに結んでいる廊下。
 別の中庭。B棟を隔てただけだが、上の写真とはちょうど反対側から撮られている。
 左側が高等部の校舎であるB棟。右が高等部のグループ学習室や、特別教室(音楽室、視聴覚室、図書室など)、それに職員室もあるC棟。正面の木々の向こうに、奥の渡り廊下も見える。
 養護学校正面のバスターミナル。ちょうど波止場の桟橋のようになっている。
 スクールバスが入ると、リフトを上下させなくても、そのまま車椅子で乗り降りできる。
 ターミナルの、A棟校長室側にある広い方のスロープ。勾配は5度だった。
 体育館側にも、スロープがある。ただし、そちらはとても狭い。
体育館側のスロープ。たしかに車椅子がやっと通れるくらいの幅しかない。
 体育館。ごく普通の体育館?
 舞台脇にはこのようにスロープがついている。傾斜は 4.5度。
養護学校前にあるマンションの屋上から写した全景写真。手前にバスターミナルとその左側に体育館。ふたつの中庭を囲むようにして校舎が3棟建っている。手前が小・中学校校舎。奥が高校校舎。

   <調査の感想>

 はじめて養護学校を訪問した。スロープやトイレなど、養護学校ならではの設備にはなるほどと思うところが多かった。このような工夫が、一般の学校や公共の建造物にもいかされたらどうだろう?
 養護学校の存在は一般にはあまり知られていないが、もう少し地域に解放されてよいのではないか。調査の日、体育館でフットサルをしている人がいたが、彼らは一般の人たちだったのだろうか。
 たとえば、養護学校の中庭は広くはないが、日当たりもよく、ブランコやベンチもあった。花壇には大きなひまわりも咲いていた。近所の住民が誰でも遊びに来れる場所として公開してはどうだろうか。
 実際、一般の小学校の校庭ではいつでも子供たちが遊んでいる。今回私達が養護学校を見学できたように、一般の人々にも公開されるチャンスがもっとあると、養護学校が特別な存在だという意識も変わってくるのではないか。(KH)