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調査(980223)

 あらためて遠藤宅の調査。昨年6月、第一回目のときにも行っていますが(970608)、自分の家の調査を行う場合のひとつの例となればと思い、再び行ってみました。一番データを集めたい場所でありながら、他人にはなかなか踏み込みにくい場所でしょう? 「調査させてほしい」と切り出すことも、なんとなく抵抗がある。
 進んで自分からやってみようという方があれば、どんどん名乗り出てください。

 雪景色。調査にはなんの関係もありませんが・・・。
 一月余り前、東京に大雪が降ったとき、遠藤宅のベランダから撮りました。道路を隔てたちょうど向かい側の、中学校の裏庭です。
 歩道からマンションの入り口までの階段。3段だが、一段一段の奥行きが広いので、手押しの車いすなら介助者がいればどうにか上れる。が、電動車いすで移動している、近くに住む友人が、これがあるために遠藤に会いに行けないとこぼしていた。一段の段差、最大で 13cm。奥行き 110cm。幅は 416cm。
 正面入り口を入っていって、通路のすぐむこうの階段を撮ったところ。階段の下、つまりこちらから見て右に入ってすぐのところにエレベーターがある。手前右側に見えるのは防火扉。通路の幅は 102.5cm。
 エレベーターは狭いので、まっすぐには入れない。本体が入り口の幅より少し左に広くできているので、横にするとかろうじておさまる。介助者は隅にへばりついてやっと乗れる程度。
 仮に電動車いすで独りで来たとしても、自力でここを使うのはとうてい不可能だろう。エレベーター本体の幅 120cm。奥行き 98cm。入り口の幅は 70cm。
 3階。エレベーターを出たところ。直接ここに2階から上ってくる階段と、4階へ上る階段がついている。車いすをここで反転させようとすると、落ちそうな気がして、怖い。
 逆にエレベーターに乗ろうとしてここで待っている時にも、ひとが下りてくればすれ違うのが非常に困難だし、階段を上り下りする人にとっても、じゃまになってしまう。とにかく狭い。
 階段は、一階分上るのに計12段。6段上ったところに 91cm×192cmの踊り場があり、そこで切り返してまた6段で上の階に達する。階段の幅は 89cm。一段の高さは 21cm。奥行きは 21.5cm。しかも上の段の下に下の段がすこし奥まで切り込んであるので、見るからに急である。エレベーターが使えない場合、何人かで車いすを持って上り下りせざるをえないが、その時は非常に怖いと思う。
 反対側から自分の部屋のドアを撮ってみた。右に収まっているのは防火扉。ここを回り込んだところも短い通路になっていて、二つの部屋のドアがそこにある。通路の幅は 102.5cm。この幅ではベビーカーとすれ違うのも困難である。
 自分の部屋のドアを開けたところ。入ったところのたたき(靴脱ぎ)から直角に右に上がるようになっている。以前はここに段差があり、昨年6月の調査の時も完全にはこれを解消できていなかったが、昨年秋、ふと思いついてこのようななだらかなスロープをつけてみた。勾配は4度。ちなみに、このたたきの幅、奥行きは 82×81cm。
 中から見たところ。スロープはちょうど横の靴箱の端まで切り込んでつけたので、支障は何も生じなかった。
 この程度の高さの上り下りなら、多少急でもスロープをもっと短くし、たたきをもっと奥まで広げてもよかったと思う。方向転換と、坂の上り下りを同時に行うのではなく、分けてできるからである。本当はそうしたかったのだが、施工者にその意図が十分には伝わらなかった。しかし以前に比べれば出入りのしやすさは雲泥の差である。
 ダイニングキッチンから奥を見たところ。元はアコーディオンカーテンで仕切った向こう側に、4畳半の部屋があったらしい。今は床にはなんの区切りもついていないが、何かの時軽く仕切れるように、このようにしてみた。左の部屋を一つ、畳にした。冬場にはこたつを置き、主に介助者の気楽な居場所として使ってもらっている。
 アコーディオンカーテンを少し開けたところである。奥の左側はいつも私がいる部屋。
 ここの出入口は、引き戸ではなく、折りたたみ式の4枚扉にした。ベッドごと移動したり、こちらの部屋と一つにしたりすることを考えたからである。逆にここを閉めてしまえば、ちょっとした壁のような感じにもなる。
 4枚扉を左右に開いたところ。奥には私の寝ているベッドがある。手前が頭。境の敷居は、斜めに削った板で段差を解消してある。
 南と東の両方に窓がある。ベッドを起こすと外の風景が見え、ちょっとした気晴らしにもなる。冬には雪景色、春には白木蓮や桜など、初夏には日々深まってゆく緑、そして秋には紅葉した木々などが見えることが、意外な安らぎを与えてくれる。
 私の居室の全景。広さは5畳ほど。ベッドの左側の狭い空間で、奥からパソコンを引き出してきて作業したり、外へ出るとき車いすに乗り移ったり、ポータブルトイレを置いてそれに座り、用を足したりしている。
 左の畳の部屋との間は、木製の引き戸で仕切ってある。
 浴室兼トイレのドア。向こうがガス台と流しで、その手前に普段はご覧の通りワゴンが置いてある。
 ドアを開けたところ。入り口には 13cmの段差がある。
 普段畳の部屋への入り口の、閉め切りになっている方の戸の外に立ててあるスロープを、入浴時にはこのようにはめ込む。内側にも同じような取り外し可能のスロープがある。
 浴室内にあるリフト。水道水の水圧を、その動力源としている。アームの上下などの制御は、乾電池だけで行える。2年に一度取り替える程度で、十分である。
 写真ではネットがぶらさげてあるが、その前にこれをシャワーチェアー用に作ったメッシュの車いすの上に広げ、ベッドで裸になったままその上に座らせてもらう。あとは浴室まで行って、ひもをアームに引っかけ、体をつり上げる。
 まるで蓑虫(みのむし)。しかし、このネットが一枚のものとして織ってあるのがミソなのだそうである。体のどこにも無理がなく、どこか特定の場所が痛いということもない。
 実際に入浴しているところを撮ってここに載せてもよかったのだが、「そんなもの、見たくもねーよ」といわれて見てもらえなくても残念なので、着衣のままとした。
 シャワーチェアー用車いすのグリップには、このようにパイプの支えがとりつけられるようになっている。頭を洗ってもらう時など、このように背もたれを倒した姿勢にする。
 頭を洗うときだけでなく、基本的にはほとんどこの姿勢。浴室の広さについていえば、ここに写っている洗面台と、それにトイレの便器がなければ、ほぼ十分である。浴室の広さは、幅 157cm、奥行き 246cm。うち浴槽部分を除けば、 157×169cm。
 シャワーチェアー用車いすの前側には、このような支えも取り付けられるようになっている。
 背中や腰などは、この姿勢で洗う。顔を洗うときも、これだと鼻に水を入れることもなく、なかなか具合がいい。
 背もたれのところに青く見えるのが、例のネットである。
 大きな地震などに備えて、各部屋の照明は基本的に天井に直接接した形のものにした。
 前の持ち主がただ一つ残していった、ぶら下げる形の蛍光灯。下のテーブルなどで何かをするときは照明が手元に近くなるが、これも直すべきか。
 地震で大きく揺れて、天井にぶつかって散乱した場合、スリッパなどの履き物がないと歩けなくなる恐れがあるし、車いすのタイヤがパンクしてしまうと、逃げられるものも逃げられなくなることも考えられる。

 <私自身の感想>

 3年前、中古マンションのこの部屋を手に入れて、以後考えに考えて内装や機械器具を整え、なるべく生活しやすいようにしてきた。だが、たとえば道路からエントランスへの3段の階段、狭いエレベーター、車いすではすれ違えない通路など、共用部分のバリアーはいかんともしがたい。また、室内を考えても、必要なスペースを作ったがために、逆に犠牲にせざるをえなかった場所も多い。収納スペースが極端に少ないのもそのためである。部屋の玄関を真っ直ぐに出入りできないこともかなり決定的な限界だ。
 人々の心のバリアー・・・。それはもちろん一番の問題ではあるが、生活のいわばハード面にあたるこうした建造物の構造が、それを下支えしてしまっている面もおおいにある。
 「バリアフリー」と言葉で言うのは簡単。バリアーをバリアーと気付かない人、感じない人のほうが圧倒的に多いのだ。ともに歩き、ともに調査を行う・・・。この活動に多くの人が参加し、あちこちで自ら展開していってほしいと願う。(遠藤)