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性同一性障害、という「障害」

 専門家ではないので、細かいことはよくわかりませんが、わたしたちの性が決定されてくる過程は、そう単純ではないようです。性染色体の組み合わせがXXなら女、XYなら男、というように、それだけで決定されるものかと思っていたら、実はその隣にある、内分泌に関係した染色体もおおいに働いている、ということが分かってきたのだそうです。
 母親の胎内では、性染色体の如何に関わらず、はじめ胎児は全てが女性。その後、精巣ができ、大量の男性ホルモンを分泌して、みずからその「ホルモンシャワー」を全身にあびた個体のみが、はじめて男性の脳を持つことになるらしいのです。
 ところが、たとえばこの時期に母親が強いストレスをうけていたりすると、それがうまくゆかないことがある。現代では、この性の境界が、ますますあいまいになってゆく傾向にあるようです。ひょっとしたら、いわゆる「環境ホルモン」、すなわち内分泌攪乱化学物質の影響もあるかもしれない。
 昨年だったか、埼玉医大の倫理委員会が、この性同一性障害を医療の対象としてはっきり認め、他の方法でどうしても治療できない場合には性転換手術をも行えるようにする、という結論を出しました。それに基づいて先月、国内でははじめての性転換の手術が行われたようです。この場合の患者は、頭では自分を男としか思えない、女性でした。
 でも、よく考えてみれば、すべての人々を男と女のどちらかに画然と分けようとすること自体、とても不自然なことなのではないでしょうか。よくいわれる男らしさ、女らしさの基準にしても、国や地域によって、また時代によってすぐ変わりうるものなのです。学校の出席簿にはじまって、あたりまえのように人を男か女かに枠づけようとせずにはおかない社会通念が、だれか具体的な個人を苦しめているということはありえます。
 アメリカやシンガポールなどの「性転換」先進国にならって、それでその人の苦しみがなくなるなら、それもいい。しかし、それがたとえどんな姿であったとしても、やはり具体的なありのままのいのちの姿を、互いにみとめあい、いかしあう関係がわたしたちの間に成り立っていなければ、それすらもおぼつかなくなるのは明らかだといわざるをえません。このことを、一体どれだけの人が踏まえているでしょうか?
 さしあたって「患者」と直接向かい合うことになる精神科医やカウンセラーなどの人たちには、せめてこのことをしっかり踏まえていてほしいと切に願うところです。
1998年11月18日