TOP
トピックス

遠藤 滋
結・えんとこ
えんとこ
ケア生活くらぶ

連載情報
 ┣ 遠藤滋一言集
 ┣ にわか歌詠み
 ┣ 調査結果報告
 ┣ えんとこ通信
 ┣ いのちの森通信
 ┗ 梅ヶ丘周辺マップ

障害者自立支援法
施行問題
支援費制度問題
映画『えんとこ』


掲 示 板
アンケート
スタッフ募集!!
リンク集
更新履歴

『セレモニアル 〜An Autumn Ode 』

 いっこうに夏らしくない夏も終わり、とうとう9月に入りました。3月から4月にかけての、つまり年度がわりに避けてはとおれない雑務は別にしても、それ以後もずっとこのホームページに連載している、家や公共建築物の「調査結果報告」づくりに躍起になってきたような気がします。整理をしていて、データにどうしても納得できないところがでてきて、何度か測り直しにも行きました。また、介助者募集のポスターやチラシを見て連絡してきてくれる人があれば、そのつど顔合わせも必要です。
 毎年、今頃になると、さしたる具体的な理由もなく、精神的に疲れはてたような、人恋しいような、ちょっと誰かに甘えたいような気分になることがあります。
 今年もそういう心の間隙をついて、みごとにぼくの中に忍び入ってきたものがあります。『セレモニアル 〜An Autumn Ode 』。笙とオーケストラのための、武満徹の曲です。
 毎週、土曜日の夜8時からETVで放送している「N響アワー」。9月5日には、サンサーンスのイ短調のチェロ協奏曲など、今話題の、あるチェリストを独奏者として、チェロの曲を2曲やっていました。そして残った時間をうめるかのように放送されたのが、この曲だったのです。笙の独奏は、宮田まゆみ。指揮はアンドレ・プレヴィンでした。
 笙という楽器は、ちょうど両手の上に軽くのるほどの、小さな楽器です。雅楽で使われているのはもちろん知っていましたが、あの大きなパイプオルガンにも似た、しかも神秘的な響きを持っています。武満のこの曲では、はじめにしばらく笙のソロの部分があり、その後にオーケストラとの協奏の部分がある。そしてまた笙のソロで終わっています。
 その、初めのソロのあとオーケストラが出るあたりで、笙を中心にひろがってゆく音の世界のあまりの美しさに、こみあげてくる感動のあまり、あやうく泣きそうになってしまっていたぼくでした。心が洗われるのと同時に、しばらくぶりに本来の自分に返ったような気もしました。
 翌日、武満徹がその音楽を担当した『乱』、『どですかでん』等の映画の監督、黒澤明が亡くなりました。実際には、この数時間後のことだったのでしょうか…。
           

1998年09月08日