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武満徹メモリアルデー

 まだ学生だった頃、友人たちの話を横で聞いていて、レコードを買ってみました。確か『武満徹の世界』という、何枚か組になったアルバムだったと思います。驚きました。
 特に「エクリプス(蝕)」。琵琶と尺八という日本の伝統楽器を使っていながら、それらの音が、沈黙の中から絶妙な間合いと迫力で、せまってくる。圧倒されました。
 いわゆるクラシック音楽を自分から聴くようになって、まだ間もない頃でした。モーツァルトやベートーベン以外に、こんな音の世界もあるのかと、それ以来すっかり虜になって、今に至ります。彼の代表作とされる「ノヴェンバーステップス」が初演されたのは、確かぼくがそのアルバムと出会った、翌年のことでした。これはニューヨーク・フィルの100周年かなにかに依嘱されて作曲されたもので、オーケストラと、やはりソロで琵琶と尺八がつかわれています。
 ぼくが買った、その『武満徹の世界』の最初に入っていたのは「弦楽のためのレクイエム」という曲で、これが彼の出世作にあたります。これを聴いて、あのストラヴィンスキーも絶賛したとか…。
 タケミツ、つまり武満徹の音楽の特徴は、一言でいえばひとつひとつの楽器が紡ぎ出す硬質な音の繊維、それらがあやなす精緻な織物の感触、とでも表現できるのでしょうか。それらは、19世紀の音楽のような和声進行による音の構造物としてではなく、自然界の森羅万象との交感の上になり立っています。その意味では、ドビュッシーにも通じますが、彼の音楽に感じるのは、あくまでも「静寂」です。音の鳴っていない「間(ま)」が重要な要素なのです。
 ストラヴィンスキー、ラヴェル、バルトーク、メシアン、ブーレーズ等々、今世紀に活躍した作曲家たちと共に、彼が音楽史に残る存在であることをぼくは確信しています。
 国際的にこんなに優れた音楽家を出しているのに、同じ日本人には意外と知られていない。マスコミにも、ほとんど扱われていません。これはいったい、どう考えたらいいのでしょうか?

1998年02月18日