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厚生労働省門前の鏡

 年明け早々、1月14日から厚生労働省には連日約1000人もの障害者や、その関係者たちが詰めかけました。10日の毎日新聞に、同省がそれまでの障害者団体との約束、それに地方自治体への指導をも翻して、支援費制度の利用に上限を設ける検討を行っている、ということが報じられたからです。
 16日には、1200人を超える人々がその内外を埋め尽くしたとか。当事者の怒りと危機感がそうさせたのでしょうが、この頃主要4団体による連絡組織も結成され、これほど立場や意見・感覚の異なったひとたちが、それらを超えてこのように大同団結したのは、障害者運動史上初めてのことと言われたほどでした。翌17日からは、厚労省は門前に警備の職員を2、30人もずらりと立たせ、せっかく行ったぼく自身も、中へは入れてもらえない状態になっていました。この日はぼくらとの交渉が約束されていたのですが・・・。

 この日から同省は事実上関係者以外の人を閉め出す厳戒態勢に入り、翌週もそれは続いたにもかかわらず、極寒の中、毎日1000人ちかくの人々による周辺での抗議行動はやまなかったようです。そして28日には、全国地方自治体の課長を集めての同省の説明会の日程にあわせて、集中的な大抗議集会が行われるはずでした。

 ところが、なんとこの4団体の代表者たちは、その前の日に、非公式に同省の担当責任者と折衝を持ち、これを妥結させてしまったのです。
 @上限設定は地方自治体への補助金の予算を算定するための目安。個々のケースについての上限を示すものではない
 A新制度の実施に当たっては一定の移行期間を設け、現行のサービス水準を維持するために当面これまでと同額の補助金を支出する
 Bはじめの一年は障害者団体の代表者の参加の下に検討会を設ける。
 ・・・これが、おおよその合意内容です。

 すべてがぶち壊しでした。全国動員をかけておいて、土壇場で裏取り引きをし、この程度の合意内容で引き下がるとは! これで集まった人たちに、どんな申し開きができるというのでしょう? そのほかの人々に対しても・・・。
 なんとものの見抜けない人たちなのかと、ぼくもこれには失望と怒りを禁じ得ませんでした。でも、この4団体は、もともとこの支援費制度については決して否定的ではなかったのです。厚労省の説明に、おおいに幻想を持っていたふしもある。それがこの時点で突然に裏切られてしまった・・・。もしかしたら、そのことに対する負い目の意識が働いていたのかもしれません。それを裏付けるかのように、当日には「全面勝利」を謳った集会が、野党の国会議員の参加もあおいで、きわめて大袈裟な形で行われました。

 この制度をいったん凍結させることは、十分にできたはずだし、また断固すべきでした。今の国際情勢のもと、ここには障害者だけでなく、実は日本のすべての人々の命運がかかっていたのですから。ほんの紙一重のことに見えますが、同じ検討会を設けるというのなら、もう一度はじめから新たにやり直すことにした方が、明らかによかった。現に世田谷でも今、それは個人の上限として決定され、それがぼく自身にも重くのしかかってきています。どんないのちであれ、一人一人のいのちを軽んずる国の行く先は、もう、見えています。

 一昔前の「親方日の丸」ではありませんが、幾重にも重なったピラミッド型の組織の頂点の、下からは見えないところでことを決め、有無を言わさずこれに従わせようとするやり方・・・。自分で納得もせずに、それに従ってしまうひとびと!
 これは何も国の行政の専売特許なのではなく、いまの日本のあらゆる組織にまだ当たり前に行われているやり方です。厚生労働省の門前の鏡は、あるいは私たち自身の姿を写し出していたのかもしれません。
2003年03月18日