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しびれ…18歳の不安

 それは18歳の時のことでした。

 受験を前にした正月、家族4人で近所を散歩していました。その途中で、ぼくはたまたま道ばたにつき出ていた石にけつまずき、危うく転びそうになりました。かろうじて踏みとどまったとたん、首のあたりから全身に電気が走ったような衝撃を覚え、それからほとんど全身がしびれてしまったのです。
 若かったせいか、この時は受験をあきらめて半年ほどぶらぶらしているうちに、しびれはすこしずつ消えてゆき、右の肩口を残してすっかり感覚は元に戻ったのですが、この時のショックは今でも忘れられません。

 このまま感覚が戻らなかったらどうしよう、とぼくは思いました。だって、ぼくはまだ女のひとのやわらかな肌にもふれたことがないのだし、この先かりにそういう機会があったとしても、なにも感じることができなかったり、またはそれがチリチリザラザラとした感触だったりしたら、しゃれにも何にもならないではないか。
 好きになったひととの愛の行為も、ぼくには閉ざされてしまったのか…。そう、考えてしまったのです。なにせ、大学に行こうとした理由の半分は、友達をつくること、とくに異性との出会いを期待してのことだったのですから。

 その後実際に、駅のホームであるひとと友達として別れの握手をしたつもりが、その手のぬくもりが忘れられなくなって…、なんてこともありました。それぐらいのことが、恋の始まりになることもあるんですね。

 それはともかくとして、もっと後になってから、ぼくはこの首からくる手足のしびれに、なんども見舞われることになります。大学を卒業して、教師になってから4年目にはそれで3ヶ月も病欠していますし、11年目からは歩けなくなって3年間休職したのが始まりで、しびれや、神経性の痛みは、時を追うごとにますます強くなってゆきました。
 寝たきりになってからのこの10年は、かえってその進行は緩やかなものになっていました。そして今回、ちょうど1年ほど前から、再びその症状が、強くなり始めたのです。

 もちろん、脳性マヒの場合の、かなり難しく、大きなリスクをともなう頸椎の手術を、それを承知で受けようと決意したのは、このままほっておくと、呼吸にも影響が出て、いのちにも関わる事態に陥りかねないと危惧したからです。でも、ほんとうの気持ちの上では、それまで顕著なしびれは手首から先、足首から先に限られていたのが、動作のちょっとした失敗で、脚はほとんど太股から下ぜんたいに広がってしまったからです。この、なんともいやな感じ…。

 髪の毛にも白いものが増え、色々な経験を経た今でもなお、18歳の時いだいたあの心配の気持ちは、残っているのでしょう。たとえ自分がこの先どんな状態になったとしても、相手の理解と、お互いのコミュニケーションさえあれば、愛の行為は可能だと確信しているのですが…。
2001年09月18日