TOP
トピックス

遠藤 滋
結・えんとこ
えんとこ
ケア生活くらぶ

連載情報
 ┣ 遠藤滋一言集
 ┣ にわか歌詠み
 ┣ 調査結果報告
 ┣ えんとこ通信
 ┣ いのちの森通信
 ┗ 梅ヶ丘周辺マップ

障害者自立支援法
施行問題
支援費制度問題
映画『えんとこ』


掲 示 板
アンケート
スタッフ募集!!
リンク集
更新履歴

  第33号
1995年2月10日発行

4月に引っ越します!

 遠藤宅が4月なかばに引っ越すことになりました。「豪邸」を買ったのです。
 場所は環境バツグンの世田谷の高級住宅街。とはいっても、今いるところから300メートルほど北、つまり光明養護学校と北沢警察署の間の通りをまっすぐ行ったところの左側にある、古ぼけたマンションの3階(!)なのですが…。となりに消防署、向かいに梅ヶ丘中学校があります。
 井の頭線の東松原駅からでも、梅ヶ丘駅からとほとんど同じ時間で行くことができます。
 また、今度はここよりずっと広いし(?!)、内装も自由に変えられるので、かなり使い勝手がよくなるはずです。しかし、月15万円という高い家賃を払う必要もなくなるかわりに、15年以上にわたる宮仕えの時代の蓄えは、すっかり消えてしまいました。
 予定は未定。まだ仮契約を済ませたばかりなので、どたんばでひっくり返る可能性もなきにしもあらずですが、引っ越しの準備や、来年度の介助者集めにむけてのあれこれなどを考えると、今のうちにどうしてもお知らせしておく必要があると考えました。にわかに忙しくなります。
 それにしても、新しい場所での生活をあれこれ考えるのはとてもたのしいですね。それまでにここにある持ち物を徹底的に整理して、できるだけ運ぶ物を少なくしておきたいので、ご協力をおねがいします。それだけでも大仕事になると思います。
 ケア生活センター作りも、今度はそちらを拠点にして行います。重ねてよろしく!


月3日は節分。この日は豆まきを兼ねてミーティングを行いました。集まったのは7、8人でしたが、おでんをつつきながらビールを飲み、雑談に花が咲いて、肝心の豆まきを忘れそうになったほどでした。
 7階から道路に向かって豆をまいて、ばらばらという音が聞こえたほどでしたが、豆があたった人が鬼になって怒鳴り込んでくることもなく、豪快な豆まきとなりました。途中で「国境の長いトンネル」の向こうの新潟からの、電話での参加もあったりして、なかなかの盛り上がりでした。一人ずつ歌も歌いました。
 以下にまじめに話し合ったことの結論を報告します。

介助料の件について 前の号で報告した介助料の赤字解消の方法についてですが、とりあえず次のようにすることにしました。
 1) 介助料は時間あたり300円とする。
 2) 新人に渡していた本『だから人間なんだ』は、買ってもらう。
 3) それ以外の、ハンズについてのこと、介助者募集のポスターやビラ、それに郵送料などについてのこと、介助者の食費についてのことは現行のままとする。
 4) 遠藤との個人契約で木曜日に頼んでいる杉沢さん(時間あたり1200円)は隔週にし、空いたところはみんなに頑張って埋めてもらう。
 なお、個人契約の財源としていた重度障害者手当は、別会計とせず、今までの介護料の財源(重度脳性マヒ者等介護制度、緊急介護制度)に組み入れ一元化します。
 1ヶ月の介助の総時間数から、へルパーの派遣されている時間をひくと、現行で約698時間になります。3)に書いたことを前提とする限り、本当は時間あたりの介助料は263円にしかならない。今度あたらしくへルパー(民間委託)の派遣が月にして約27時間加わるのですが、それを考えにいれても274円にしかならないのです。現状を追認したところからものを考えるならば、250円にしたところで、別に文句をいう人はいないと思います。
 しかしぼくとしては少なくとも300円の線は維持したい。個人契約の人とのバランスや、行政への働きかけなど対外的に積極的な姿勢でものを考えたいからです。そこでひとまず個人契約(専従介助者)だった杉沢さんには隔週で入ってもらい、みんなの介助料の300円をなんとか維持することにしました。
 12月から今年の3月までの計算を、一応この方式で行います。了承してください。(これについてはその後もっと積極的な案を考えついたので、後で提示します。検討してみてください。遠藤)

来年度の介助者募集について 住所が変わるので、それまでに現在のポスターやビラをできるだけ今のうちに生かしておきたい。個人的にでもどんどん来てピラ配りなどをお願いします。
 新しいものについては、3月中に原稿を作って印刷し、各学校やボランティアセンターのようなところに郵送してしまう必要がある。意外に手間がかかります。できるところからどんどん準備を進めていってください。
 印刷に出すまでの原稿づくりに関することと、発送に関することとを、わけて同時に進めていく必要があると思います。ポスターのたこ足づくりがとても大変で、これは何人かで集まって作業したほうがいいでしょう。
 デザインなどのあり方については、ミーティングの時にいろんな意見がでましたが、今からでは現実的にそう大きく変えることはできないのではないかという気がします。もう一度話し合いができれぱと思うのですが…。

緊急時のマニュアルづくりについて かねてからぼく自身の身体のことを考えると、何かあったときに自分の口から指示を出せなくなることもないとはいえず、それが不安でした。今回の阪神大震災を機に、わざわざ非常持ち出し用の袋を点検にきてくれた人もいるので、最低限の緊急時の約束ごとを作っておきたいと思います。
 ただし何が起こるか分からないというのが緊急時の緊急時たるゆえんです。いくらマニュアルを作っても、その場ではどれだけ機転を利かせられるかが事を左右します。これはどこにいても同じなので、日頃から気構えだけは持っていてください。


せめてもの心配り
 ぼくとその立場ヘのイマジネーションの助けとして。
 ぼくが自分のいのちを生かすために、その健康状態をコントロールし、生活のリズムを維持するのは、ひとが思うより大変な事です。その上に何かまとまった事をしたいと思うと、よけいに苦労をし、時にあせりがちになる事もあります。なにせ一日にできる事が、非常に限られているから。
 ホワイトボードの介助の予定表をうめるために、夜、あちこちに電話をかける事も、それがいいかげんにはできない事だけに、結構時間と体力を使います。だから自分の方からボードをうめていってくれる人がいると、それだけでその人に惚れてしまう。
 まあ、それはそれとして、この、電話をかけるときに、ぼくなりに精一杯の心配りをしている事があります。お気づきでしょうか?
 まず、一人一人のアルバイトや実習、試験など、大きな都合については、何となく頭にいれておきます。この、何となくというのが実はミソなので、アバウトにしておかないと、プレッシャーがかかってかえって覚えられない。これだけの人数の人の事を完全に覚えておく事など、はじめからできるはずがないからです。 つぎに、近所にいる人、または頼めばほとんど間違いなく来てくれる人は最後まで残しておいて、それ以外の人、むしろ頼みにくい人のほうから先に電話をかけてみます。その際、あまり頻繁にならないようにできるだけ留意します。しばらく音沙汰がなかった人の事も、これで様子をつかむ事ができる。
 社会人になっていて、毎日仕事に追われているであろう人に電話をするときは、よほど人がいないのだと思ってください。でも、これらの人たちには、もっとそれぞれの都合を尊重せざるをえない場合が多いのです。これらの人たちの何人かと、前に書いた最後まで残した何人かが、ぼくにとってはいわば隠し玉なので、そう簡単には使わないようにしています。
 隠し玉を先に使ってしまうと、すぐにお手上げになってしまうのは目に見えた事なので、特定の人にあまり無理をかけないためにも、そうしているのです。
 でも、実際にはぼくがかけられるのは一晩にわずか3人ぐらい、多くても5、6人が精一杯です。翌日来てくれるはずの人が、前の日になってから急に来られなくなって、そのときは必死になってたてつづけに十数人に電話をかけ、食事も途中でやめてしまい、歯みがきもリハビリも全部すっとばしてしまったこともあったほどでした。
 なぜこんな事をくだくだと書いてきたかというと、それは前々号に書いたイマジネーションに関わることだからです。ぼくがただやみくもに電話をしているのではなく、これだけの心配りをしているのだということを、ぜひみんなに知っておいてほしい。ともすれば、これは逆になりがちなのです。近くにいる人、頼みやすい人に、先に電話をかけたくなる。
 これはほんの一例にすぎません。いまのぼくはこういう心配りも楽しんでやっているし、人と話すことも嫌いではない。電話にかぎらず、いろんな人といろんなおしゃベりをする事を、むしろとても楽しんでいます。
 それでも、一週間に一日ぐらいは、どっと疲れてやたらとだるく、ものもいいたくない日もある。機嫌が悪いわけではないのですが、そういう時に限って介助者の交代のたびにそれを説明しなければならないので、これが結構きついのです。こういう時、前の人が後の人にそれを伝えておいてくれると、とてもありがたいのですが…。
 ぼくのところにきて介助をやってくれている、その動機については、たとえそれが何であったとしてもかまわないと思います。例えば、それが異性との出会いを求めてであったにしても。それを不純だなどとは、ぼくは決して思いません。
 ただ、介助に入っているとき、ぼくの介助をしているということだけはしっかり押さえておいてほしい。ぼく自身とその生活のリズム、特に身体の状態や体調のコントロールには、イマジネーションを十分に働かせて。
 ぼくの方でも、みんなに対して限りなくイマジネーションを働かせています。せっかくぼくの介助ということを媒介として創り出された人間関係なのだから、それをお互いに本当に生かしあえる、すばらしい人間関係に育ててゆこうではありませんか!

(遠藤)


介助料予算(強気の遠藤案)
[収入]月額309,000 1 重度脳性マヒ者等介護人派遣料233,000
2 緊急介護料 20,000
3 重度心身障害者手当56,000
[支出]月額295,200 介助料 350(時間あたり単価)×671234,850
交通費30,000
振込手数料(郵便貯金口座使用) 1,950
えんとこ通信18,400
ビラ・ポスター10,000

 食費は各人の介助料から引く。1と2は純然たる介助料なので、そのように使い、雑費はとりあえず3から支出する。介助料の350円にこだわる理由は、これを2倍すると700円になり、安いバィト料程度にはなるので目安としやすく、例えば役所に要求する時、実現可能な額として説得力を持つ。同時に雑費は雑費として必要なこともはっきりと主張しやすい。ただし「専従介助者(個人契約)」は作らず、ハンズへの依頼もできる限り少ない回数にとどめる。