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深沢環境共生住宅

 世田谷区に福祉施設を併設した「環境共生住宅」が完成したと聞いて、これから調べようとしている個人住宅の調査の良い参考になるのではないかと思い、見学・調査を行いました。
 深沢環境共生住宅は、新玉川線の駒澤大学前から等々力行きのバスに乗り、深沢坂上で下車すると、そこにあります。(3.19.2000)
【概要】
竣工/平成9年3月
所在地/東京都世田谷区深沢4−1
敷地面積/7388.08u
延床面積/区営・区立住宅:5536.86u  高齢者在宅サービスセンター:594.54u  集会室:69.07u
延床面積合計/6200.47u
構造/1号棟:地上5階建て 2・3・4号棟:地上3階建て 5号棟:地上4階建て
住戸/区営住宅(身障者用3戸を含む):43戸 区営住宅(シルバー用):17戸 特定公共賃貸封宅:10戸 合計:70戸
付帯施設/高齢者在宅サービスセンター、集会室、公開空地緑地、駐車場25台
計画・設計/世田谷区、市浦都市開発・岩村アトリエ共同企業体





 
 敷地内見取り図

 標識には「深沢環境共生住宅」と、「デイ・ホーム深沢」のふたつの名前が表示されている。
 敷地内には建物が合計5棟と、駐車場や住民が手入れをする花壇や菜園などがある。全体図の中で青く塗られた部分は、中庭のビオトープ(池)。敷地はもともとの地形を残し、なだらかな傾斜がついている。
 デイサービスセンター

 同じ敷地内には高齢の住人の方や、地域の高齢者が通いでやってくるデイサービスセンターがある。送迎者はドアの前まで入ることができる。
 中庭と風車

 環境共生住宅では、写真手前のような風車を利用して、デイサービスセンターの床暖房などに利用する電力を発電している。敷地が小高い岡の上にあるため、風の通りがとてもよい。
 デイサービスセンターと中庭

 デイサービスセンターの前にはビオトープがあり、部屋から池を眺めることができる。この池の水は、地下水や雨水を利用したもの。デイサービスセンターの張り出した屋根の上には芝生が植えられている。
 風車以外にも、ソーラーシステムを設置して太陽熱発電を行っている。写真の2号棟の屋根にはソーラーパネルが見える。
 ビオトープ

 写真の手前のほうから水が流れ落ちるようにできている。春や夏には水の周りに様々な植物が育つことだろう。現在も、昔から敷地内にある井戸を利用して、地下水をくみ上げることができる。以前は飲料用としても利用していたが、最近は水質の変化により、家庭菜園などに利用されている。
 井戸とスロープ

 写真の左下に見えるのが井戸。この他にも3個の井戸が残されている。実際にポンプを押すと水がでてくる。右上には、住宅の一階のベランダにスロープがついているのが見える。
 共有スペースのある1号棟

 丸い形をした部分は共有スペースとして利用されている。窓も円形につくられ、光が十分に取り込めるようにできている。その左手のベランダは柵に木を用いているため、硬い建物のイメージが少しやわらかく見える。
 また、写真では見えないが、西側の壁には格子状の緑化フェンスがあり、春・夏には緑が壁面を覆い、光を遮り、断熱材にもなっている。こうしたフェンスはどの棟にも設置されている。
 手前に見える柵つきの歩道は、中庭から1・2号棟の入り口へつながる通路。中庭からこの通路を利用するには階段を数段あがらなければならず、ここだけが車椅子で通れない部分だった。
 中庭のベンチ

 ちょっとしたところに住む人への配慮がうかがえる。
 自転車置き場

 一見したところ普通の自転車置き場だが、壁を大きく円形にくりぬくことで、敷地内の風通しと見通しをよくしている。
 地面は全体的に白っぽいざらざらした舗装で、雨水を吸収し、地下水となるように工夫されている。このざらざら感は車椅子に乗っている人にはやや弱い振動として伝わってくる。
 4号棟入口のスロープ

 4号棟の入り口。両側に住居がある。住居のドアは少し高いところにあるため、スロープがとりつけられている。

 スロープの勾配= 7度
 住居のドアの幅= 82 cm
 エレベータ

 どの棟にもエレベータが取り付けられている。介助者とその他4人が同時に乗ることができた。

 入り口の幅= 90cm
 奥行き= 163cm
 幅= 105cm
 手すりの高さ= 80cm
 車椅子利用者用ボタンの位置= 100cm
 エレベータ前のベンチ

 エレベータの入り口前には、写真のようなベンチが置かれ、待つ人が休めるようになっている。
 障害者住宅用スライド式ドア

 車椅子利用者のための住宅のドアは、スライド式にできており、入り口の幅もその他の住居の入り口よりもかなり広い。
 障害者用住宅前

 障害者用住宅は一階にあり、入り口まではスロープがついている。

 スロープの勾配=5度
 手すりつきトイレ

 運良く調査に協力的な住人の方に出会うことができ、住まいを見せていただいた。
 トイレや風呂場には、はじめから手すりが取り付けられている。バリアフリーを意識したつくりになっているため、住宅内の段差も極力最小限の抑えられている。廊下の幅は87cmで、車椅子でも通れる幅である。また、部屋の通気性などにも気を配った部屋の配置になっているそうだ。
 雨水再利用

 ベランダには、屋上から降りてくる雨水をためる貯水槽が各住居に設置されている。貯水槽の中には浄化装置も取り付けてあり、非常時には飲料水として利用することができる。 いたるところで雨水の再利用がされていることに感心した。
 屋上緑化

 5号棟の最上階まであがってみると、やはりここでも住居の屋根部分が緑化されていた。
 5階通路

 通路は、車椅子と人がすれ違えるだけのゆとりがあった。
 また足元を照らすための照明器具が、通路の壁に埋め込み式で設置されていた。
 (介助者の右後方に見える)  
 
 通路の幅= 130cm
 手すりの高さ=75cm
 
 写真にはないが、階段でも各階の行き来は可能である。
 
 一段の高さ=18.5cm
 奥行き=28.5cm
 階段の幅= 144cm
 手すりの高さ= 85cm
 

 

   <感想>

 「環境共生住宅」というだけに、立地条件、水や風の流れ、以前の住環境などを最大限に考慮したつくりに出来上がっていることが分かった。また、もともとの住人の方が高齢の方が多いため、高齢者や障害者にも気を配った住宅・付帯施設の設計がなされているようだ。ただし、今回は外側から観察したのみで、実際住人の方の意見をうかがう機会が少なかったため、実際にはどのようにして人と環境が共生しているのか、設計者の立場ではなく、住民の立場からどのような努力がなされているのか、また、障害のある方の健常者の方がどのように接触・交流してるのかなどについてもう少し知る機会があればと思った。
 今回はうす曇の空の下での調査だったので、次回は夏の天気の良い日におとずれてみるのもよいのではないかとも思う。

   <遠藤滋の感想>

 「ここを見学したおかげで、ぼくは文字通りの“共生”住宅へのイメージを、果てしなく広げることができました。でも、これはぼくの望むものではない。」  「すばらしく大きな、参考にできる建物を、よく造ってくれましたね。参考にさせてもらいます。」