新聞スクラップ

身障者ら1000人が厚労省前で抗議(毎日新聞)2003.01.16
天下り先施設には29億円継続 厚労省(毎日新聞)2003.01.20
補助金「交付基準」巡り混乱日本(経済新聞)2003.01.21


 
障害支援費上限:
身障者ら1000人が厚労省前で抗議

2003.01.16 毎日新聞

 4月にスタートする障害者の「支援費制度」で、厚生労働省がホームヘルプサービスの時間数に「上限」を設ける方針を示していることについて、全国の身体・知的・精神障害者ら約1000人が16日午前、東京・霞が関の同省周辺に集まり、方針撤回を求めた。立場の違う障害者団体が1000人規模の共同行動を取るのは初めて。同省周辺で大規模な集会が開かれるのは、95午7月に薬害エイズの抗議で約300O人が旧厚生省を囲んだ時以来という。
 障害者側は当初、全員が厚労省1階ロビーに集まる予定だったが、混乱が予想されたため、同省周辺の路上などで、方針撤回を訴えた。知的障害者を支援する「全日本手をつなぐ育成会」の鈴木伸佳さんは「厚労省は、障害者が生活する場を施設から地域へ移す理念を示しているのに、それに見合うお金はつけておらず、まだ施設偏重のハコモノ意識から抜け出せていない」と話していた。

 厚労省は限られた補助金を地方自治体に公平に配分するとの理由で、障害者が受けるホームヘルプサービスの利用時間などに基準を定め、補助金の配分額を算定する方針。障害者側は「基準を盾に現行のサービス量を削る自治体もあるはずで、基準は事実上の『上限』だ。サービスは減らさないというこれまでの厚労省の説明は何だったのか」と強く反対している。 【須山勉】

 
補助金打ち切り:
天下り先施設には29億円継続 厚労省

2003.01.20 毎日新聞

 地域で生活する障害者を支援する事業の補助金を打ち切ることを決めた厚生労働省が、役員に同省OBが天下っている知的障害者入所施設「国立コロニーのぞみの園」(群馬県高崎市)には、03年度予算案でほば例年並みの約29億円の補助金を計上していたことが分かった。国立コロニーは役職員の高給などが問題視されており、障害者団体は「障害者支援費制度ではホームヘルプサービスの利用時間に『上限』を設けようとしているのに、天下り先への補助全に手をつけないのは納得できない」と批判している。
 特殊法人の国立コロニーは国の整理合理化計画に基づき、今年10月に独立行政法人化される。同省はこれまで、各入所施設と同様に支給していた措置費(約16億円)に上乗せして、年約30億円の補助金を国立コロニーに出してきた。措置費が支援費に変わるO3年度予算案にも、支援費に上乗せして補助金と独法化後の運営交付金分計28億5000万円を計上した。
 国立コロニーの理事長は歴代、旧厚生省OBが天下っており、現在の年収は1570万円、2人いる理事(現在は1人が同省OB)は1380万円。
 同省からの出向者もいる職員の給与も高く、同省が一般の社会福祉法人施設の財務状況(99年度)を比較した資料によると、1人当たりの人件費は1170万円で、社会福祉法人施設の523万円の約2倍。
 運営面も(1)全国の施設で入所者に地域で暮らしてもらう取り組みが行われている中で、国立コロニー入所者の地域移行率は低い(2)入所者の入浴は原則週3回の日中に限るなど、サービスが画一化している−−−などが指摘されている。
 独法化に向けた検討委員会の中で、複数の委員が「民間の取り組みの方が進んでおり、国立コロニーに期待するところはない」との意見を出し、コロニー側も「取り組みが遅れているのは事実」と認めている。
 厚労省障害保健福祉部は「(予算計上は)施設運営に必要と判断した。コロニーの今後のあり方については、検討委員会の意見を問いていきたい」と話している。
 同省は昨年末に「地域で生活する障害者支援の要」とされるコーディネータ一事業などへの補助金打ち切りを決めたほか、4月スタートの障害者支援費制度でも、ホームヘルプサービスの利用時間をもとに補助金の交付基準を設けようとしており、障害者団体が「上限につながりかねない」と同省に抗議している。 【須山勉】

 
障害者支援費制度
補助金「交付基準」巡り混乱

2003年1月21日 日本経済新聞

 障害者が福祉サービスを選べる支援費制度が四月から始まるのを前に、制度の根幹となる訪問介護の予算配分を巡って混乱している。厚生労働省は「利用が増え、予算が不足する」と補助金の交付基準を設定する方針を固めたが、障害者側は「利用の上限になる」と猛反発、自治体からも「負担増だ」と反対意見が出ている。同省は二十一目の全国担当部長会議で説明する予定だが、障害者側は「もっと時間をかけて検討するべきだ」と反発を強めている。

厚労省予算不足になる恐れ 障害者「利用上限に」と反発
 厚労省が検討しているのは訪問介護(ホームヘルプサービス)事業費約二百七十七億円の交付基準だ。訪問介護は施設に偏っていた障害者を地域社会で暮らせるようにする新制度の中心的な事業で、緊縮財政の中、昨年末に来年度予算で前年度比一四・五%増の大幅な伸びが認められた。
 ところが厚労省障害保健福祉部の足利聖治企画課長は「予算が足りなくなる可能性がある」と不安を訴える。新制度では自分でサービス内容や業者を選べ「これまで措置を受けていなかった多くの障害者が支援費の支給を申請する」(足利課長)とみているためだ。
 そこで例えば、実態調査を基に脳性マヒなど全身性障害者は「月百二十時間」など障害ごとに平均利用時間を算出して、市町村への交付基準にしようとしている。
 身体障害者福祉法などでは、国の補助率は「二分の一以内を補助できる」と規定。利用者が予想を越えて新制度で予算が足りなくなれば、補助額を「三分の一」「四分の一」など一律にカットできるが、同省は「自治体の格差や、障害ごとの状況を反映できない」と交付基準の必要性を説明する。
 東京都では全身性障害者の訪問介護について月約三百四十時間まで認めていたが、交付基準が月百二十時間になると、二分の一だった国の補助率が実質的に四分の一に減ってしまい、残りは自治体の”特ち出し”に。都は全身性障害者の訪問介護に年間十二億円余りを出していたが、「さらに七億円の負担増になるかも」(福祉局在宅福祉課)と試算する。
 交付基準について都は十五日、「ホームヘルプサービスの充実にかかわる負担を地方にしわ寄せするもの」と指摘し「支援費制度の根幹を揺るがす深刻な問題」として国庫補助金の一律的な上限を設定しないように求める要望書を厚労省に提出した。
 「予算配分の問題と使い方の問題は別」。坂口力厚生労働相は十七日の閣議後の記者会見で「予算はあらかじめ決まっている。足りない分は市町村にやってもらわなければならない」と理解を求める。だが障害着らの不安を和らげるため、同省は急激に補助金が減らないような方法(激変緩和措置)やほかの事業で余った予算を振り分ける方針を二十一日の会議で明らかにする。
 全国自立生活センター協議会の中西正司代表は「現状の交付の仕組みで不都合はないと思うが、訪問介護の交付基準について障害者を交えて検討会を設置するべきだ」と訴えている。

訪問介護の事業者増へ利用も大幅増見込む
 厚生労働省によると、身体障害者で訪問介護事業を利用しているのは四万八千五百十五人(昨年一月現在)で、在宅の身体障害者約三百二十五万人の一%余りにとどまる。支援費制度では身体介護の単価(一時間)が三千七百四十円から四千二十円に引き上げる予定で、現行の介護報酬と同じになるため、サービスを提供する事業者が増加するとみられる。同省は昨年十月時点で新制度によって選択肢が広がり、訪問介護などの居宅支援を受ける身体障害者は約十万人に達すると見込んでいる。