支援費制度の施行にあたっての問題点

@障害のある人の生存権の喪失について
A契約上における問題について
B経済的な負担増について
C介助サービス内容について


 
@障害のある人の生存権の喪失について
 日本国憲法に裏付けられている措置制度においては、国民の基本的権利である生存権と国や地方自治体の責任における応答義務の関係が明記されている。したがって、
↓ 措置制度の整備が不十分なことを理由に国民の生活が脅かされた場合は、
↓ 国及び地方自治体の応答義務違反として、
↓ 国民の不服審査請求権が法的に保障されていた。

 このようなことを背景として、
↓ 措置制度では、国民と国及び地方自治体が公的責任における公の契約を結ぶことになっていた。
↓ 障害のある人が国や地方自治体の公的責任を問題とする介助保障に関する制度化要求は、社会的に正当性を持つことができた。

 しかし、支援費制度では、「措置から契約へ!」となるのであるから、
・国民と国及び地方自治体との関係は存在しない。
あくまでも福祉サービスの現場においては、国民と民間事業者との自己責任による私的契約関係となる。
 その結果、サービス内容が不適切であっても、法的に不服審査請求権が保障されるのではなく、
・国及び地方自治体は、単なる苦情処理に成り下がるのは必然である。
つまり、障害のある人の生存権が喪失することにほかならない。
 
A契約上における問題について
 支援費制度の特徴として、「利用者の決定に基づく自由な選択」に基づいて福祉サービスを受けられることになっている。しかし、個人対個人による契約関係の本質は「等価交換」である。つまり、『必要なサービスは等質の価値に換算される料金を支払うことによって、初めて受け取ることができる』のである。
 「支援費」が行政が支給することになっているが、その水準は良くても現行制度の枠を出ないと言われている。
 障害のある人がその水準以上の介助を必要としている場合は、個人の資産を活用するしかないが、低所得者の場合、生存を脅かされる程の低い水準の介助サービスに甘んじなければならない。
 私人間における契約関係では、双方が自由な選択権を持っている。つまり、
・利用者のみが自由に事業者を選べるのではなく、その逆もあり得るのである。
・利用者の経済状況や介助内容の複雑さを理由に民間事業者から選ばれなくても、
・自己責任が基本原則なのだから、利用者は何一つ文句が言えない。

ことになる。
 
B経済的な負担増について
 支援費制度や介護保険が実施されることによって、障害のある人は保険料や利用料により経済的に非常な圧迫を受けることになる。
 
C介助サービス内容について
 支援費制度や介護保険における介助サービスは、外出や社会参加が認められていない等、生命維持のためのぎりぎりの水準に留まることが予想される。
 しかも、人的派遣を必要とする重い障害のある人の場合は、指定事業者のへルパー2級等の有資格者が介助者として対応したとしても、医療行為が受けられないことにより、決して安心できる介助内容とはならないことが予想される。
 また、これまで自力で介助者を集め介助体制を維持してきた障害のある人にとっては、
・介助者が指定事業者の有資格者に限定されてしまう
・介助体制の崩壊の危機を迎える

ことが考えられる。
 もちろん、障害のある人が自力で介助者を集めなければならなかったことは、措置制度が未整備だったことにより追い詰められた結果ではあるが、
・地域で差別を乗り越え
・介助を支えることによって共に生きようとする健常者との関係を広げてきた

のである。そして、
・多くの介助者が存在することで障害のある人の生活が維持されてきた
のは、紛れもない事実である。
 現在でさえ介助者が足りない状況なのに、多くの無資格の個人介助者(普通の学生やサラリーマン等)が抜けざるをえなくなると、障害のある人の生活は崩壊する。