“生活の圧迫”が明らかに
障害連シンポジウム『全身性障害者にとって自立支援法とは何か』行う


 「外出などを減らし、支出を切り詰めている」これは、去る7月22日(土)東京都障害者福祉会館で行われた障害連シンポジウム「全身性障害者にとって自立支援法とは何か」(約60名参加)で出された話しである。
 この日5名のシンポジストを中心に議論がなされた。

 まず、馬場精二さん(東京都多摩療護園自治会会長)は、「4月から利用者負担が大幅に上がり、大体の人は1ヶ月3万円程度しか手元に残らなくなり、外出の手配などに苦労している」と発言した。また、「10月からの障害程度区分によって軽度に認定されてしまうのではないかという恐れを療護施設で暮らしている人たちはみんな持っている」とし、さらに「親が生前かけていた扶養年金までもが自立支援法では収入認定されてしまっていることはおかしい」とも語った。

 土屋淳子さん(わかこま自立生活情報室)は、「学生などを集めて一人暮らしを始め、だんだん自分に自信がついてきた矢先に、自立支援法に変わってしまった。ヘルパーに資格が必要になり、介助者を集めるのがとても難しくなってきた。障害を持っていても、普通に、旅行したいし、デートもしたいし、楽しい生活をしたい。応益負担の影響も大きく、これから今までどおりの生活ができるか心配。養護学校の後輩たちに今後も自立生活を勧めていけるのだろうか」などと訴えた。

 関根義雄さん(障害連幹事)は、「常に所得保障の確立が先送りされてきた」ことを指摘し、「扶養義務の早急な見直しの必要性」とともに運動の具体化を提起した。また、「年金や手当てなどは2ヶ月に一度などのように、なぜ毎月支払われないのか」と疑問を投げかけた。さらに、自立支援法では「移動支援について自動車による送迎を前提としている傾向があるが、もっと個人単位で支援を捉えていくべきだ」とも語った。

 宮原映夫さん(NPO法人ボーダレス理事長、東京頸髄損傷者連絡会事務局長)は、「名古屋の通所授産施設の利用者が利用料の不払い運動を起こしているが、工賃より利用料が高くなってしまうまったくおかしな制度だ」と強調し、また、「各自治体の障害福祉計画に関心を持ちアプローチしていくことが重要である」とも提起した。さらに、「障害者と事業者、あるいは介助者が連携して運動していくことがこれからは重要になるのではないか」とも述べた。

 石渡和美さん(東洋英和女学院大学人間科学部人間福祉学科教授)は、「自立支援法はどの関係者から話しを聞いても問題はありすぎる法律であることを異口同音に言われる」と述べ、その認識から「いまJDでも実態調査を行っている」とした。また、「いまこそ所得保障の議論がきちんと行なわれるべきである」としたうえで、「拙速な介護保険との統合は行わず、ケアマネジメントのあり方などの見直しも含めて、総合的な観点に立ち、制度改革の方向性を見出していくべきだ」と提言した。さらに、「JDとしては10月に大行動を起こす考えを持っている」ことを明らかにした。

 指定発言の渡辺由美子さん(自立生活センターたいとう)は、「今でも介護サービスの時間が足りない、土日はボランティアに頼っている状況で不安定。これから先どうなるか心配」と語ってくれた。

 同じく指定発言の金澤恂さん(障害連・心の灯代表)は、「自立支援法によって、生活が良くなるどころか、逆戻りになっていく」と発言した。

 会場からは「DPIとJDなどが手を組みこの法律の早期見直しに向けた運動をつくっていくべきである」や「障害者と介助者がもっと連帯をして運動すべきである」等々の意見が出された。

 司会を務めた伊藤事務局長は、「障害連が草の根運動であることを実感できた。今日出された意見を大切にしながら、大きな運動につなげていきたい」と最後に決意を表明した。


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