「奈緒ちゃん」に関する新聞記事(朝日新聞)

95/06/28->(東京)
95/11/08->(茨城/下館)
95/12/09->(東京)
95/12/14->(山梨/増穂町の若芽の会)
96/01/14->(愛知/名古屋)
96/09/18->(兵庫/神戸アートビレッジセンター)
97/01/09->(栃木/真岡)
97/04/11->(神奈川/泉公会堂)
97/04/13->(神奈川/横浜・泉区)
97/10/11->(福岡)


 
▼95/06/28 東京朝刊
障害のある娘と家族普通に生きた12年 記録映画「奈緒ちゃん」完成
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 重度のてんかんと知的障害のある少女の日常生活を12年間にわたって撮った記録映画「奈緒ちゃん」がこのほど完成し、7月下旬から公開される。障害をことさら強調せずに、家族や地域にはぐくまれながら成長する姿を素朴に描き出した作品だ。障害者という枠を超え、家族らしさの回復という今日的な問いかけも含まれている。

 映画の主人公は、横浜市の西村奈緒さん(21)。生後6カ月でてんかんの激しい発作に見舞われて以来、現在まで発作に苦しんでいる。両親、弟との4人で暮らす。
 撮影は8歳の時に始まった。近くの小学校の養護学級に通うが、足取りがおぼつかないので母親は目が離せず、後をついて無事を見届ける。学級では、知的障害のある児童らと机を並べている。
 ひな祭りには母親が知り合いの子供らを招待してパーティーを開くが、奈緒ちゃんはなじめず家の前の公園でボール遊びを始める。小さい時は近所の子らにからかわれたこともあったが、母親が近所に事情を打ち明け、協力を求めてからは、いっしょに遊んでくれるようになった。
 中学に入学してからは、母親が共同購入していたパンを近所へ配達する手伝いを始めた。自転車で配達する奈緒ちゃんを見かけると、近所の人も声をかける。「父母だけでなく、近所の人たちに育ててもらった。地域と共に大きくなってゆくのが一番いい」と母親が話す。
 が、知恵遅れもあり、心労はつきない。「どうせなら愛される障害者になってほしい。だけど、母親として女として、炊事や裁縫を教え、できるなら結婚させてやりたい」。そんな心配をよそに奈緒ちゃんは明朗快活で人気者だ。障害者の友人から電話がかかると「わざわざ、すいませんねー。ありがとーざいました」と大人の口調をまねする姿が愛らしい。
 映画は21歳まで続く。普通の主婦だった母親は、障害者作業所の所長。作業所には、かつて養護学級で学んだ仲間たちが集まってきた。「娘を拠点に、仲間作りが達成できた」
 演出の伊勢真一さんは「障害者とその家族の苦悩や行政の問題を訴える『福祉映画』にはしたくなかった。父親らしい父親や懐かしい家族像など、最近失われがちになったホッとするような人間のあり方を表現したかった」と話す。てんかんの発作のシーンは撮れば劇的な効果があるが、あえて撮らないと決めていた。が、不思議なことに撮影中には一度も発作が起きなかったという。
 国際てんかん協会副会長の松友了さんは「障害者がいる家庭も、実際はさほどドラマチックなものではない。奈緒ちゃんは、どこにでもいる市民として描かれ、ふつうに生きることの素晴らしさが伝わってくる。日本のよき家族が登場し、その平凡さゆえに感動的だ」と話している。

[朝日新聞社]


 
▼95/11/08 東京朝刊 地方版
映画「奈緒ちゃん」自主上映 障害の女の子12年追う 下館 /茨城
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 重度のてんかんのある、知的障害者の女の子とその家族を、12年間にわたって追い続けたドキュメンタリー映画「奈緒ちゃん」が、下館市内のボランティアグループによって、今月11日、下館市総合福祉センターで自主上映される。

 今春に完成した「奈緒ちゃん」を演出したのは、横浜市に住む西村奈緒さんの叔父にあたるフリーの映画監督伊勢真一さん。
 伊勢さんは、姉の長女である奈緒ちゃんが病気であることを知り、「ぜひ映画を撮りたい」と思い立った。記録映画の編集者だった父(故人)の親友だったカメラマン、音楽・音響専門家たちも協力した。
 クランクインは1983年1月3日の初もうでのシーン。奈緒ちゃんが8歳のときだった。以来、両親と弟の愛にはぐくまれて成長し、成人するまでの姿を12年間も撮影し続けた。
 「単なるお涙ちょうだいの映画でなく、その日々の生活ぶりを淡々と追い続けた。撮影中は不思議なことに、一度もスタッフの前で(てんかんの)発作はなかった」という。
 伊勢さんは昨年、下館市制41周年の記念広報ビデオ「夢紀行 下館」(全国広報コンクール・ビデオの部で最優秀賞を受賞)を製作した。そんな関係から、今春に東京であった「奈緒ちゃん」の完成試写会を見た市公聴広報課の山田純男係長が感激。
 その後、映画を見た朗読ボランティア「野ばらの会」や心身障害者親の会「生活を考える会」、点訳サークル「杖の会」などのボランティア団体が、「奈緒ちゃん」上映委員会(委員長、小薬和子・野ばらの会会長)を組織し、自主上映をすることになった。

[朝日新聞社]


 
▼95/12/09 東京朝刊
障害ある少女の記録映画「奈緒ちゃん」、100カ所の自主上映決定
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 重度のてんかんと知的障害がある少女と家族の日常生活を、12年間見つめた記録映画「奈緒ちゃん」の上映が、全国に広がっている。今夏の公開から、これまでに約百カ所の自主上映が決まり、すでに1万人が見た。東京や北海道では、見た人たちが「応援団」を作って口コミで広げている。東京では15日まで、劇場で再映されている。来年には大阪や3重でも劇場公開される。

 映画は、横浜に住む西村奈緒さん(22)の8歳から成人式までを描く。家の中で、学校で、公園で、時にはしかり、時にはけんかもしながら、悩み、笑い、はぐくみ合う、普通の家族と地域の人たちが淡々と映し出される。
 「地域の中で育てたい」「愛される障害者に」と、奈緒さんを見守る母信子さんは、自宅を拠点に小さな集まりを続け、やがてそれは地域作業所として実を結ぶ。
 8月に劇場公開された東京では、伊勢真一監督の学生時代の友人らが呼びかけて「奈緒ちゃん応援団」(岩永正敏団長)ができた。「もっと多くの人に映画を見てもらおう」と、タブロイド判の「奈緒ちゃん新聞」を発行して上映会のPRをお願いしたり、知人のつてをたどって各地で試写会を開いたりと、口コミ中心の支援活動をしている。
 応援団事務局には「障害者の家族のイメージをくつがえしてくれた」「家族の中でくりひろげられる平凡な時間が、実はすごく貴重な時間だったと改めて思った」「家族の中に、たまたまてんかんという病気を持つ女の子がいる。いいことも悪いことも含めて、まったくふつうのことだと分かった」などの感想が寄せられている。
 自主上映希望者には、フィルムを1万円で貸し出している。問い合わせは「奈緒ちゃん上映委員会」

[朝日新聞社]


 
▼95/12/14 東京朝刊 地方版
てんかんの少女1家描く「奈緒ちゃん」上映 増穂町の若芽の会/山梨
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 重度のてんかんを患う少女の一家の12年間を描いたドキュメンタリー映画「奈緒ちゃん」が来年1月21日、南巨摩郡増穂町天神中条の文化会館で上映される。映画は、夏に封切られてからこれまでに全国約百カ所で上映され「福祉映画というジャンルを超えた人生の映画」「生きていく勇気を与えてくれた」などと多くの反響を呼んでいる。
 主人公は、重度のてんかんと知的障害を重複して患う横浜市在住の西村奈緒さん(22)。奈緒さんのおじで、ドキュメンタリー映画監督の伊勢真一さん(46)が、「奈緒ちゃんと家族を励まそう」と奈緒さん8歳の初もうでの時にメガホンを握り始め、21歳の成人式まで12年間の家族風景を98分にまとめた。
 家の前の公園で近所の子どもと遊んだり、学校で他の障害児とけんかしたり、母信子さんの口調をまねして電話に出たりする奈緒さんの無垢(むく)な明るさ。「愛される障害者に育てたい」と語る信子さんの献身さ、父大乗さんのユニークさ。家族や地域の日常が淡々と映し出され、時に観衆の笑いを、時に涙を誘う。
 「身近な日常の中に幸せがあることを知った」「押し付けがましくなくていい」「障害者に対する考えが変わった」――。アンケート用紙に書かれた観客の感想の一部だ。11月26日に北巨摩郡の清里高原で開かれた「日本環境教育フォーラム」で上映した時も好評だったという。「福祉映画と限定せず、地域社会はどうあるべきか、家族や幸せとは何か、などの議論のたたき台にしてほしい」と伊勢監督は話す。
 上映を企画したのは、増穂町の障害児者支援団体「若芽の会」(長沢初会長)。各世帯年400円の会費によって、障害児の宿泊学習や交流会などを行っている。福祉映画の上映も「奈緒ちゃん」が4回目。去年は同じく障害児がいる家族を描いたアメリカ映画「ギルバート・グレイプ」を上映した。

[朝日新聞社]


 
▼96/01/14 名古屋朝刊
重複障害少女の記録を上映 中区であす、監督の講演会も /愛知
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 重度のてんかんと知的障害のある少女と、家族の12年間を記録した映画「奈緒ちゃん」(16ミリカラー、1時間38分)が15日、中区新栄の市生涯教育センターで自主上映される。名古屋での上映は初めて。
 主人公の奈緒ちゃんこと西村奈緒さん(22)=横浜市在住=は、生後半年ごろから重複障害を抱えて生きてきた。9歳になるころ、奈緒さんのおじで映画監督の伊勢真一さん(46)が普段の生活を撮影し始めた。
 映画は、ふつうの家族の中で、ハンディのある子供が成長してゆく過程を淡々と描いている。「撮影というより、会いに行くという感覚で奈緒ちゃんを訪ねた」。奈緒さんが成人するときにクランクアップ。従来の福祉映画とは一味違う点が評価され、各地で上映され始めている。

[朝日新聞社]


 
▼96/09/18 大阪朝刊
障害ある少女12年間の記録映画 神戸アートビレッジセンター/兵庫
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 重度のてんかんと知的障害がある少女の日常生活を12年間にわたって撮影した記録映画「奈緒ちゃん」(カラー、98分間)が21、22の両日、神戸市兵庫区新開地5丁目の神戸アートビレッジセンターで上映される。主催者は「福祉問題を告発するような映画ではなく、病気を特別視せずに淡々と描かれ、新鮮な感動を呼び起こす」と観賞を呼びかけている。
 映画は、横浜市の西村奈緒さん(22)が主人公。奈緒さんは生後間もなくてんかんの発作に見舞われた。8歳の正月から撮影が始まり、21歳までの間の父母や弟、地域社会とのかかわりあいが描かれている。奈緒さんの叔父のドキュメンタリー作家伊勢真一さんが監督し、昨年完成した。
 全国各地で上映され、毎日映画コンクール記録文化映画賞や文化庁優秀映画作品賞などの賞を受けた。
 5月に神戸市内で上映されたこの映画を見た市内の主婦が感動し、参加する環境問題の市民団体「ONE EARTH」(大阪市)に呼びかけて、今回の上映が実現した。

[朝日新聞社]


 
▼97/01/09 東京朝刊
てんかんへの理解を求め「奈緒ちゃん」を上映 11日に真岡で/栃木
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 てんかんと知的障害を併せ持つ少女と家族の日常生活を撮ったドキュメンタリー映画「奈緒ちゃん」が、11日午後2時から真岡市荒町の市民会館小ホールで上映される。1995年7月に初めて上映されてから、全国300カ所以上で上映され、5万人を超える人たちが観賞した。映画に感動した人たちが感想を寄せ、「奈緒ちゃん新聞」が発行されるまでになったが、県内では初めての上映という。
 この映画は、主人公の奈緒ちゃんの叔父にあたる伊勢真一さんが演出を担当し、8歳から21歳までの奈緒ちゃんを撮影した。
 てんかんは、今では薬でほとんどの発作を抑えられるが、まだまだ世間から誤解されることが多いという。だが、この映画では発作の場面は一切ない。初もうでに出かけるところ、お母さんにしかられるシーンなど、1人の少女が家族や地域の人たちとふれあいながら生きていく様子が、自然なタッチで描かれている。
 真岡での上映は、「地球のこどもフォーラム事務局in真岡」と日本てんかん協会県支部の共催。
 真岡市に住み、教育問題に取り組んでいる、こどもフォーラムの鈴木和子さん(42)が昨年春、浦和市の上映会に出かけ、「障害がある人の映画っていうと構える人がいるが、つらい姿を映すのではなく、人が生きる姿を淡々と撮っている」と感動し、自主上映を思い立った。
 夏には、日本てんかん協会会長で宇都宮大学教授の鈴木勇二さんと出会い、「一緒にやりましょう」と話がまとまったという。

[朝日新聞社]



▼97/04/11 東京朝刊
「奈緒ちゃん」の記録映画が里帰り 泉公会堂で特別上映 /神奈川
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 横浜市泉区に住む重度のてんかんを抱える少女と家族の12年間に及ぶ日常生活を描いた記録映画「奈緒ちゃん」が12日、泉公会堂(同区和泉町)で特別上映される。2年前に地元で封切られてから、全国約300カ所で上映され、6万人以上が見たという。「あたたかい気持ちになった」「生きる勇気を与えてくれた」と各地で感動の輪が広がっている。当日は、奈緒さんの母親と監督が2年間の報告をする予定だ。

 主人公は、重度のてんかんと知的障害のある西村奈緒さん(23)。奈緒さんのおじで、ドキュメンタリー映画監督の伊勢真一さん(48)らが「発作に苦しむ奈緒ちゃんと家族をはげまそう」とメガホンを取った。
 母親の信子さん(53)は、家族で見る映画だと思っていたから、一般に公開するのは抵抗があった。「部屋が汚れていたり、主人がステテコ姿だったり、ふだんの生活そのままでしたから。長男も『カンベンしてよ』といやがった」と話す。
 奈緒さんが8歳の初もうでの時から21歳の成人式までの12年間。家庭、学校、地域で奈緒ちゃんが人々とふれあいながら成長していく様子が淡々と描かれている。素朴な日常が、見る人の涙や笑いを誘う。
 「こんなにやさしい気持ちが、自分の心に残っていたなんて……」「忘れかけていたものをとりもどした」。アンケート用紙に書かれた観客の感想は感謝の言葉でいっぱいだ。「今は公開してよかったと思っています」と信子さん。
 信子さんは昨年11月から泉区総合庁舎内にあるふれあいショップ「てん」で障害者らとともに働いている。「映画を見て感動した」と京都から店を訪ねてきた人たちもいた。
 今、奈緒さんは、発作の頻度も減って泉区の自宅で家族と元気に暮らしている。伊勢さんは「言葉だけのノーマライゼーションとは違って、子ども、障害者、お年寄りが地域でふれあいながら生きる姿が心に染みます」と語る。

[朝日新聞社]



▼97/04/13 東京朝刊
映画「奈緒ちゃん」里帰り上映 横浜・泉区 /神奈川
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 重度のてんかんと知的障害がある少女と家族の12年間に及ぶ日常生活を描いた記録映画「奈緒ちゃん」の特別上映会が12日、横浜市泉区の泉公会堂で開かれ、約700人が訪れた。
 上映会には、近くに住む主人公の西村奈緒さん(23)も参加。チケットやパンフレットを売りながら大きな声で「こんにちは」「ありがとう」と呼びかけた。
 上映後、笑顔の奈緒さんを横に、母親の信子さん(53)は「奈緒の育った地元で再び上映できてうれしい」と舞台であいさつ。弟の伊勢真一監督は「たくさんの人に来ていただいて、本当に感謝している」と語った。

[朝日新聞社]


 
▼97/10/11 西部朝刊
知的障害の少女の記録映画「奈緒ちゃん」、県内初上映へ /福岡
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 重度のてんかんと知的障害のある少女とその家族の日常生活を12年にわたって追い続けた記録映画「奈緒ちゃん」の上映会が31日に福岡市、11月2日に北九州市で開かれる。家族と地域に見守られながら成長していく姿を淡々と映し出したフィルム。2年前の夏に公開され、関東を中心に全国で自主上演が進められているが、県内では初めてだ。

 主人公は横浜市に住む西村奈緒さん(24)。奈緒さんのおじで、ドキュメンタリー映画監督の伊勢真一さんがメガホンを取った。撮影は瀬川順一さん。瀬川さんは映画完成直後の1月に肺がんで亡くなり、これが遺作となった。
 映画は8歳の初もうでから21歳の成人式までを描く。奈緒さんは生後6カ月から、てんかんの激しい発作に苦しんでいる。ただ、発作や障害をことさら強調することなく、小学校に通う姿、自宅前の児童公園で友達とボール遊びをする姿などを映しながら、奈緒ちゃんが家庭、学校、地域と触れあっていく様子を記録している。
 上映会を企画したのは、滋賀県信楽町で地元の人々とともに陶器作りに励む知的障害者を描いた「しがらきから吹いてくる風」で知られる映画監督の西山正啓さん(49)。昨年、古賀市(当時、古賀町)に移り住み、環境や福祉をテーマに活動を続けている。西山さんは「かけがえのない時間をいかに過ごすか。それを丹念に記録した映画だ。少女のキラキラと光っている時間を撮っている。家族の絆(きずな)、地域の絆を問う説得力のある映画なので、多くの人に見てほしい」と話す。

[朝日新聞社]