(問い合わせ先)
「えんとこ」製作委員会
TEL 03(3406)9455
FAX 03(3499)5547


 映画「えんとこ」をより理解して頂くための基礎情報を整理してみました。


− 製作について −

<製作期間>
3年6ヶ月

<企画準備>
1995年10月〜1996年3月

<撮影期間>
1996年3月〜1999年3月

<編集・仕上げ期間>
1998年12月〜1999年3月

<製作主体>
◎「えんとこ」製作委員会
東京都渋谷区神宮前6‐28‐5 宮崎ビル302
TEL:03-3406-9455 FAX:03-3499-0547
◎―隅社
      TEL:03-5685-0037 FAX:03-5685-0038
◎クロスフィット
      TEL:03-3407-5278 FAX:03-3499-0547

<製作形態>
     自主製作
      (芸術文化振興基金より―部助成)


− 全体像 −

 遠藤滋(51才)、脳性マヒがもとで、寝たきりの生活を強いられて10年あまりに成ります。

 《ありのままの命にカンパイ!!》をモットーに、多くの若者達の介助を得て、独り暮らしを続けてきました。

 遠藤滋が自ら組織した介助のネットワーク『えんとこ』に係わった若者達の数は、すでに1000人を超えている。
 若者達は、介助を通じて、他の場所では得難い[何か]をモノにしているようです。

 この映画は、寝たきりの障害者、遠藤滋と介助の若者達との日々の交流を、3年間にわたって記録したものです。
 それは、ひとりの障害者と向き合い、介助の若者達と向き合った、青春ドキュメン夕リーでもあります。

 『えんとこ』を舞台に、ありのままの命の物語が描かれて行きます。


− 主人公と舞台 −

遠藤滋

〇1947年5月
 静岡県に生れる。仮死状態で生れ、1才の頃、脳性マヒと診断される。

〇1974年3月
 立教大学文学部卒業。
 都立光明養護学校に、教員として採用され、職場での差別と闘いながら、小田急梅ヶ丘駅に車椅子用スロープをつける運動に関わったり、世田谷区に対して、介護人派遣制度の改善を求める運動を始めるなど、地域の障害者活動に積極的に参加する。

〇1985年7月
 「だから人間なんだ」を友人と自主出版。この本づくりが、ありのままの命を祝福し、命を生かし合うことを、自己決定して生きるきっかけとなる。

〇1991年
 まったく寝たきりの状態となる。
 『えんとこ』の場で、介助者のネットワークを組織、独り暮らしが始まる。

 

介助者達(若者達)

〇20代の学生を中心とした若者達が、一日三交代で遠藤滋の介助にあたっている。

〇介助を必要とするように成ってから、1000人をゆうに越える若者達が、パートナーとして遠藤滋に関わってきた。
(1980年から始められた、介助ノートという名の日記には、その時々の若者達の生の声が記されている。すでに大学ノート100冊あまりになる)

〇しかし、介助者の不足は、慢性化している。一日たりとも、介助者の不在は許されないのだが・・・。

『えんとこ』

〇東京世田谷区梅ヶ丘の住宅街にある、ごくありふれたマンションの一室2DKが、遠藤滋と介助の若者達の拠点。
 遠藤の居るところであり、縁のあるところでもある、『えんとこ』は、日々の営みの傍ら、定期的な通信の発行、本の出版、映画の上映、障害者が街で暮らすための調査活動等、様々な試みの中心と成っている。

〇『えんとこ』は重度の障害者をケアする所と言うより、小さな学校、ユニークな会社、サークルの部屋に似て いなくもない。
 それは、遠藤を中心にした心と体のネットワークでもある。


− 製作意図 −

 重度の障害者であるこの映画の主人公遠藤滋は、地域や職場における障害者差別、福祉行政の立ち遅れの、まさにまっただ中を生き、時にこぶしを振り上げ闘ってきた男である。
 しかしこの作品の製作意図は、いわゆる告発や批判に加担するところにはない。もちろん問題からただ眼をそらして、障害者の物語を情緒的に詩い上げようという訳でもない。
 遠藤滋の言う<ありのままの命にカンパイ>という考え方にフォーカスを合わせてみたい。
 「ありのままのいのちを祝福し、いのちを生かし合う」という姿をこそ、映像化し、多くの人々に問いかけてみたい。遠藤滋と介助の若者達の日々の営みの中にこそ、その姿があるにちがいないと確信している。
 特別な場所ではなく、遠い未来のことでもなく、今、自分の居る場所にスポットを当て、眼を凝らし、耳を澄ますと、「ありのままのいのち」に気づくことが出来ると、遠藤滋は言っているのだろう。
 それは、障害者にとっての自己認識と言うよりも、もっと普遍的な意味を持つ問いかけであるようにも思う。
 結果として、地域で生きる障害者や老人をはじめとする弱者のケアに対する問題提起に成ることを前提にしつつ、もっと拡く、もっと深く、受けとめてもらう内容を目指したい。


− 企画のきっかけ −

 実はこの物語の主人公、遠藤滋と、制作主体である演出家の伊勢真一、企画の岩永正敏は、学生時代の友人である。
 3年前、伊勢の自主映画「奈緒ちゃん」の上映の件で、遠藤滋と大学卒業以来、およそ25年振りに再会、交流が復活した。
 25年の時の流れは、それぞれを変えていた。
 遠藤滋は、学生時代のように走り回れる体ではなかった。ベッドの上で寝たきりの生活を、もう十年以上続けていた。
 二度目の『えんとこ』への訪問からカメラを持ち込むことに成る。
(撮影 安井洋一郎)
 以来3年間、遠藤滋に会いに行く度に、撮影は繰り返され、『えんとこ』での遠藤と若者達との日々の営みを記録した、膨大な映像が残された。
 遠藤滋と介助の若者達の3年間を記録したドキュメン夕リー「えんとこ」は、演出の伊勢、企画の岩永を始めとする、遠藤滋と同時代に生きてきた、制作ス夕ッフの出会い直しが、産み落とした作品でもある。


− ス夕ッフについて −

◎演出伊勢真一 作品歴
TV番組
・「そして5人が戦死した」 東海TV
  (芸術祭優秀賞受賞作品)
・「新世界紀行−聖なる河 ガンジス大紀行1・2」 TBS
・「黒潮 ―いのちの海流―」 NHK
短編映画
・「信・望・愛 ―孤高の洋画家 小堀四郎90才の肖像―」
  (教育映画コンクール最優秀賞作品)
・「ふるさと幻影―森田茂の世界から」
  (広報映画コンクール最優秀賞受賞作品)
長編ドキュメン夕リ―
「をどらばをどれ」
「TAKUMI 匠」
 (JSC/日本映画撮影監督協会賞)
「奈緒ちゃん」(’95年度劇場公開作品)
 (山路ふみ子福祉賞・JSC特別賞・毎日映画コンクール記録映画賞グランプリ・’95年度キネマ旬報文化映画ベストテン(第2位)・第6回文化庁優秀映画作品賞・高崎映画特別賞・日本映画ペンクラブドキュメンタリー部門第2位)
  ※’95年秋より全国各地で上映/全国700会場、8万人動員
「ル−ペ」(’96年度劇場公開作品)
  (日本映画グランプリ・’96年度キネマ旬報文化映画ベストテン第3位)
  ※’97年度春より大阪、名古屋、京都他で単独ロ―ドショウ)
「見えない学校」現在全国各地で自主上映中
◎撮影安井洋―郎
◎音響米山 靖
◎音楽横内丙午
◎録音渡辺丈彦
◎照明三浦方雄
◎企画岩永正敏
◎制作野口香織
大場健二
篠塚昌述
◎制作進行助川 満
◎夕イミング笠原征洋
◎絵山下菊二
◎協力ヒポコミュニケーションズ
東京テレビセン夕ー
読売ス夕ジオ