えんとこTimes

 1999年春誕生した映画「えんとこ」は、ゆっくりと、しかし確実に
上映の輪を拡げて来ました。

 さしあたっての目標だった50ヶ所の上映を実現。映画を観た人が
自分の地域、職場に持ち帰って再び上映する、という循環が始まっています。

 12月1日の朝日新聞「天声人語」に紹介されてから、国内のみならず、
海外からも上映の問い合わせが寄せられるようになりました。

 自主製作、自主上映を一人でも多くの人の力で支えてもらうために
「えんとこTimes」を発刊していきたいと思います。

 絶大なるご支援を!




「えんとこ巡業記」

伊勢真一

 年内上映目標の50ヶ所を達成。これで、少しずつ借金も返せるかな・・・。
 自主製作映画の最悪パターンは、製作で借金をつくり、上映でその借金を2倍3倍にふくらませることです。
 秋に入ってからは、毎週末にどこかしらで「えんとこ」の上映会があり、私も呼ばれてちょっとしたスピーチをする機会が増えました。口の悪い友人は、まるで旅芸人だね・・・というけれど、自主製作の作品の宿命として、監督がその役割を引き受けることになる。
 自分で作って、自分でセールスする。産地直送のお百姓さんのようなものか。
 山梨県増穂町、東京都練馬区・墨田区・江戸川区・世田谷区、大阪府日本橋、鳥取県米子市、東京都多摩市・国立市、埼玉県所沢市、宮城県仙台市、新潟県長岡市、鳥取県岩美町・・・この秋から冬にかけてこれまでに私が立ち会った上映会です。 これ以外にも、いくつかの地域で上映会が行われ、多くの人に「映画」を観てもらうことができました。といっても、まだまだ始まったばかり、これから「えんとこ」台風が季節外れに全国をゆっくりと巡るはずなのですが・・・。
 静岡県焼津市の上映の試みをちょっと紹介したい。
 ここでは、市内12ヶ所の保育園がそれぞれ上映を行うことになりました。
 市内にある、なかよし保育園の園長が、東京で「えんとこ」を観て、大感動・・・「今、自分たちの街に必要なのは、この映画に描かれた心だ」と、思い立ち、周りの保育園に声をかけ、たとえ小規模でも良いから、それぞれの地域で、それぞれの保育園を会場にして、上映をしようとなったそうです。
 保育園での上映を観た市民が、私たちも上映したいと声を上げており、さらに上映の輪は広がりそうだといいます。(最新情報では、焼津市議会での上映も決まったそうです)
 人口およそ11万人の焼津市で、ちょっとした「えんとこ」ブームが沸き起こっているという、うれしい話。保育園という地域の人々にかけがえのない場所、まさに、ここも縁のあるところ「えんとこ」にちがいない。
 みんなが、・目分のすぐ近くの「えんとこ」を意識していくきっかけに、映画「えんとこ」がなればとてもうれしい。

 で、これを読んでいただいている万々にお願い。ぜひぜひ上映に挑戦してみてくれませんか。上映の可能性のあるところに「えんとこ」を紹介していただけませんか・・・・。
《映画「えんとこ」演出及ぴ営業担当風来坊》




50男の実にいい顔
高崎 明

 「えルとこ」を見た。「えんとこ」は縁のあるトコ、寝たきりの障害者、遠藤滋さんのいるトコという意味。遠藤さんは50才。たまたま僕も50才。そういう接点がまず映画をとても近いものにしていた。知らない仲と言え、50年生きてきたというのはそれだけでお互いご苦労さまというか、なんか連帯感のようなものを感じてしまう。
 1日24時間、若者たちが3交代で介護して遠藤さんの命を支えている。好きなことをやるどころか、その日その日を生きることで精一杯という感じなのだ。ところが、ここが遠藤さんのしたたかなところというか、たくさんの人に命を支えられながらしっかりと自分の人生を生きていて、50男の実にいい顔を映画の中で何度も見せてくれる。
 若者たちと一緒に海に行き、みんなに支えられながら歩こうとする遠藤さんのはち切れんばかりの笑顔に、僕はちょっと涙をこぼしてしまった。こんな顔をして笑える50才がいたことに、なんだか救われた気持ちになったのだ。最近肩が痛かったり、歯が抜けたり、ひとの名前がなかなか思い出せなくなったりで、僕自身なんとなくジジ臭くなって、いまいち勢いのなくなってた50才だったが、遠藤さんのあの顔を見て、オーシ、オレもやるぞって気分になったのだ。
 映画に出てくる介護の若者たちがすごくいい。映画のパンフに《僕にとっては”暇なとき友人宅にあがり込んで勝手に本を読んだり食ったりしているだけ"です》というのがあったが、そういう気負いのない関わり方が見ていてとてもさわやかだ。
 いずれにしても久しぶりに「オーシ、やるか!」って体の血が騒ぐような映画だった。
 知り合いの50男、50女に声をかけて、お互いの50才を祝う上映会をしようかとたくらんでいるところだ。(「オーシ、オレも」「私も」という人、連絡ください。あ、もちろん50才でなくても構わないんですよ。
【横浜三ツ境養護学校教論】




わからないから楽しいのだ
増田 喜昭

 「えんとこ」という映画を見た。えんとことは寝たきりの障害者、遠藤滋さんのいるところ。そこに集まる介助の若者たちと過ごした3年間の記録映画である。
 映画は遠藤滋さんの顔のアップから始まる。その言葉はとても聞き取りにくい。ほくは字幕スーパーをつけてほしいなあと思った。初めて介助にやってきた若者に遠藤さんが何を教えているのか知りたかったからだ。しかし、映画を見ているうちにそんな風に考えた自分が恥ずかしくなつた。少しずつ遠藤さんの言っていることが理解できるようになったからである。
 人と付き合うということは、そういうことだったのだ。自分の力で時間をかけて少しずつ理解していくものだったのだ。近ごろのテレピは字幕スーバーがやたらに多く、ときには不必要と思われるぐらいに出てくる。わかりやすくしているつもりが、かえつておせっかいになっているのだ。
 子どもの本の中の【注】や【解説】もほくはあまり好きでない。分からないということが分かることがいいのだと思っている。自分で調ベたり、近くにいるだれかにたずねたりすることが楽しいのだ。
 当然、この映画にも答えはない。ただ、1日24時間3交代の介助なしには遠藤さんは生きていけない。介助の人たちのそれぞれを映像で見ながらぼくは、人と人の付き合う時間のあり方を考えてしまう。
 ともあれ楽しい映画だった、明るい映画だった。
 夏休み、子どもたちと海で遊びながら、この映画のラストシーンで若者たちに支えられながら海の中を歩いていた遠藤さんの姿を思い出している。あのシーン、本当に支えられているのはあの若者たちだったということに今ごろ気づいた。
−子どもの本専門店店主−




映画『えんとこ』が本になりました。

●遠藤滋と『えんとこ』上映委員会編・著
●全244ページ/A5判
●定価1,500円(税込)

 映画『えんとこ』から1冊の本が誕生しました。映画の主人公である遠藤滋の想い、そして介助を通じて遠藤滋と出会った多くの人たちの声が収められています。また、付録として映画の完全採録も収録。映画を観てから読んでも、観る前に読んでも、観て読んでまた観ても、心にひびく言葉が、そのたびに何かを語りかけてくれるでしょう。
 映画の上映会場と通信販売でのみ販売しています。
お申し込み・お問い合わせは03−3406−9455 えんとこ上映委員会までどうぞ。

◇内容◇

(1)座談会映画『えんとこ』の誕生

(2)第1部 遠藤滋の言葉・考え
   ・大学時代の手記
   ・教師時代の著述
   ・『えんとこ通信」より
 ・鼎談みんな不完全燃焼だから出会うことことができるんじゃないか。

(3)第2部 「介助者ノート」より
 ・1980年からスタートし、約100冊にものぼる「介助者ノート」の中から、さまざまな声を抜粋。「えんとこ」の魅力を伝えるリアルな声を紹介。

付録映画『えんとこ』完全採録



遠藤滋一言集

 映画「えんとこ」の完成上映会が始まってから半年。上映運動は迫い風です。
 おそらく、時代にとって何らかの必要性に応えるところがあるのでしょう。どこまでゆくのか、そら恐ろしい気もします。
 でも、そう思うと、ぼくとしてはやはり気になるところが出てきてしまう。この映画を観てくれた人たちの感想のなかに、「”あるがままの白分でいいんだ”と感じることができて、肩の力がぬけ、とても楽になった」というようなものが多いことです。
 「ありのままの自分の命と、それが置かれている状況・・・。それを一旦まるごと自分でひきうけて、全ていかしてゆけばいい。おいしいところ収りは、禁物。一見難しそうにみえても、人の目を気にせず、すこし勇気をふるって自分の命の姿を裸にしさえすれば、それだけで、自ら決めて”今"のすばらしい生き方を展開することができる」
 これが、今までぼくがみんなに伝えようとしてきたメッセージでした。ぼくがいいたいのは、修業して悟りをひらけということでもなければ、だれか特別な能力に恵まれた人に、教えを仰げばいい、ということでもありません。むしろ、そんなことは考える必要はないんだよ、いま生きている、この命を唯一のよりどころとして、それを大切に、まるごと生かして生きればいいんだよ、という積極的な姿勢。
 そしてそれは必ず、自分のまわりにいる誰彼との関係の中でしか、できないことだし、考えられないことです。そうやって、人はそれぞれにいかしあって、生きてゆけばいい。ぼくのホームべージにつくってある「雑記帳」や、電子メール等で、ちゃんとかみあったメッセージを返してくれる人もいます。
 そごまで読みとってくれる人がいるのだから、伊勢の映画創りも、まんざらでもないのかも知れません。
 とりあえず、感謝、感謝!
(1999・12・5)



 
「えんとこ」アンケートコーナー


すごくよかったです。
(S・Y 12歳 女)


帰って人に話して聞かせたいのですが、今は勿体なくて少したってから自分で解釈したら話そうと思います。
(K・I 59歳 女)


遠藤さんの顔が大好きです。おじいちゃんに似ている気がしました。
(A・S 19歳 女)


今日で3度目ですけど、「えんとこ」いいですね。遠藤さんセクシー!
(M・N 40歳 女)


命のオーケストラを見たという気持ちです。
(58歳 女)


「意味がないからおもしろいんだよ」という遠藤さんの言葉が、難しく考えている真っ只中の私にとって、遠藤さんの生き様は本当にいろいろな意味でショックでした。
(K・C 24歳 女)


伊勢さんの映画を見た後は、自分が透明になった気がする。情報、装飾があまりに多くて、自分がどこに居るのかわからなくてモヤモヤしてしまう、そんな時伊勢きんの作るもの、伝えてくれるものは、現実に在るものを、大きくもなく小さくもなく、そのままシンプルに伝えてくれる。
(Y・M 43歳 女)


主催している人達が、本当にこの映画のことが好きなんだな・・・、この上映会をしたかったんだな・・・ということが伝わってきました。
(T・M 27歳 女)


子供のころを思い出すような、なつかしい気持ちになりました。えんとこが大きな家族のようだったからかもしれません。遠藤さんが暖かく見守ってくれる、そんな感じがしました。
(K・S 41歳 女)


遠藤さんの笑顔を見ると、自分もなんだか嬉しくなりました。話される全てを、耳を澄ませて、しっかり聴きたいと思いました。指の先から、この人は生きてる、本当に生きてるんだと感じました。
(M・M 21歳 女)


さりげなく深く・・・よかったです。遠藤さんの前向きな明るさが、見る人にも、かかわる人にも元気を与えていると思って、そこのところがよく伝わってきてよかったです。
(S・Y 45歳 女)


今、自分探しで忙しい毎日を送っている大学生です。この作品を見て、この焦りまくっている今が、あんまり意味のないものになったとしても、それはそれで意味があるから、「ま、いっか」という気持ちになりました。
(19歳 女)


「水」。最初に聞こえたときから気になっていたのですが、「水の音」は遠藤さんの歩みの音なのだ、と感動した。歩みの音、遠藤きんの中にいる海、えんとこに集まるみんなの中の水・・・。
(Y・S 21歳 女)


はじめての気持ちです。どうやって生きていくことが正しいかなんてないと思いました。勇気をだして何かを始めることが大切なんだって思いました。
(Y・S 20歳 女)


今日偶然駅前のポスターで上映会のことを知って、やって参りました。人が生きていく事を改めて考えさせられました。生きることは本当にシンプルで、そして素晴らしい。きれい事では済まされない事が多いのは分かっていますが、それでも明日も頑張ろう!という気持ちにさせていただきました。忘れていました、歩くことを・・・、当たり前のことで一歩一歩ゆっくりでも歩いて行こう。
(N・S 31歳 女)


素晴らしかったです。映画を見る私は、まるで遠藤さんの隣に居るかの様な錯覚を覚え、こんな風に映画を通じてわかる感動に自分自身驚いてしまいました。
(I・M 45歳 女〉


遠藤さんの「人に迷惑をかけることは、とてもいいことだ」という言葉が胸にグッときました。人に気を使いすぎて心の病に悩んでいる人が私の回りにたくさんいるので。遠藤さんが金城武にそっくりで、すっかりファンになってしまいました。
(H・I 30歳 女)


遠藤さんがすごく大きく、強くみえました。私も、もっともっと強くなりたい。
(N・S 22歳 女〉


若者達の言葉、しぐさがとても心に残りました。「充実している」「少し疲れるけど気持ちいい」ロックの青年のマッサージの手つきなど・・・。
(H・T 51歳 女〉


うれしい映画でした。観れて良かったです。もう数回観たい。映画から感じるものが変わると思いますから何回でも観てみたい。
(K・M 19歳 男)


監督さんが、スタッフ一同力を抜いてつくるようにしたと言っていたが、それと反比例して皆さんの一生懸命さが、ズンズン伝わって来てしまいました。
(H・E 32歳 男)


妙な感動です。お酒の好きな遠藤さん、私と一緒です。遠藤さんと彼の命綱である介護の若い人たち、そして、映画を見ながら耳をかたむけ、耳に神経を集中し、彼の一言一言を聞きのがすまいとする私たち。主役が誰だかわからない感じでした。もしかしたら、見ている私たちなのかとも思えました。
(M・T 42歳 男)


心から楽しく見せてもらいました。重くて、軽くて、悲しくて、おもしろくて、しかし良質で深いユーモアきえ感じさせてくれる不思議な感動がある映画でした。
(K・K 51歳 男)


今、死んでもかまわないけど、次につなげていくまで頑張らないと。
(H・M 36歳 女)


ハンディを持った人は不幸ではないんですね。そう思っているのは私達の思いあがり。夢を持って当たり前の事にも喜び、色んなことに挑戦していく姿は、やれば何でもできるのに、何もしようとしない、諦めてしまっている私達よりも、何倍もステキな人生を過ごしている。人生を楽しんでいる。もう私もずいぶん歳をとっちゃった、と思っていたのですが、まだまだこれからかな・・・。
(K・K 34歳 女)


パンフレットの「だって君はひとりで勝手に何かをやっていくことなんて出来ないだろう?」というメッセージを見た時は、何となく、そして瞬間的に介助者側サイドからの言薬なんだろうなと思ってました。何という思い上がり!基本的な事を気付かせてくれた映画だったと思います。
(I・K 38歳 女)





「天声人語」に裁ってしまったこと
〈1999.12〉

 事の始まりは「カンドゥーコ」という名のイギリスの車イスのメンバーを交えたダンスグループのコンサートでした。「えんとこ」のすぐ近く、世田谷三軒茶屋のホールで行われた公演を、遠藤や映画「えんとこ」応援団の皆と連れ立って観に行ったその翌日に、「天声人語」にカンドゥーコの紹介記事が掲載されたのです。
 思い立って映画「えんとこ」の世田谷豪徳寺での上映会へのお誘いの手紙を「天声人語」サンに書いてみました。
 すると、12月1日の「天声人語」に映画「えんとこ」が紹介されたのです。反応は、すさまじいものでした。「えんとこ」上映委員会の電話は、「ぜひ映画を見たい」「ぜひ上映したい」という全国各地(カナダや台湾からも!〉からの問い合わせで、まるまる3日間鴨りっぱなし、てんやわんやの嬉しい悲鳴騒動でした。正直慌てました。だって、東京・横浜・大阪等の大都市だけでなく、北海道・九州でも、上映予定が無かったからです。電話が鳴るごとに、上映会の予定が無いことを謝り、見たいのであれば、何とか上映会を開催していただけないかとお願いしたり、の繰り返しでした。われわれの自主上映は、上映委員会が自主的に上映するというわけでなく、映画を見たい、見せたいという方々に自主的に上映してもらう、というシステムだからなのです。
 しかし「天声人語」を読んで問い合わせをしてくる人の中には、容赦のないキツイ方たちもいて、「なぜ上映が無いのか?ちょっと無責任では・・・」というニュアンスのお叱りも受けました。
 スミマセン。
 「だって、君は一人で勝手に何かをやっていくことなんて、出来ないだろう?」
 よろしくお願いします。
(いせしんいち)



「えんとこ」を自主上映しませんか

1999年 伊勢真一監督作品 カラー16ミリ 100分
企画・製作映画「えんとこ」製作委員会/一隅社/クロスフィット
「えんとこ」のフィルムは全国どこへでも貸し出しいたします。
あなたの街で上映してみませんか。
「えんとこ」は縁のあるトコ。寝たきりの障害者、遠藤滋のいるトコ。
この映画は遠藤滋と介助の若者たちとの日々を
3年間にわたつて記録したドキュメン夕リ一です。
自主上映及び上映会についての、お問合せはこちらへ
「えんとこ」上映委員会
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